モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン氏が、現在の米市場を「完璧な環境」と称している。
理由を聞いてみると、2009年以降の米市場を支えてきた楽観が戻っていることがわかる。
企業利益の面では多くの追い風が吹いている。
現在は『心配の壁を登る』にはほぼ完璧な環境だ。
経済データ、政治的・地政学的データはグチャグチャで雑音だらけ、時には恐ろしくさえあるのに、業績修正の要因はプラス方向だ。
これで株が下げるのは難しい。
ウィルソン氏がBloombergで、米国株市場に対し強気の見通しを語っている。
「大きく美しい法案」に含まれる投資減税、ドル安など、企業利益への追い風に触れている。
ウィルソン氏は近年、多くの時期にコンセンサスより弱気なスタンスを取ることが多かった。
足下ではかなり強気なスタンスに転じているが、これは同氏のシナリオ通りの展開だ。
ウィルソン氏は、トランプ大統領就任直後は経済・市場に過酷な政策が先行すると予想し、年前半の相場の不振を予想していた。
さすがにトランプ関税は当初、同氏の予想を超えていたものの、それも現実的でない高関税率が取り下げられたことで、市場は落ち着き、強気を取り戻した。
ウィルソン氏は当初から年後半についてプロビジネスな政策など投資環境の改善を予想していた。
ただし、市場のリスクが払拭されたわけではない。
「おそらく、市場にとっての最大のリスクは
以前話したように金利が4.5%を超えるか
あるいは
業績開示シーズンに期待外れがあるか
だろう。
そうなれば、5-7%の調整が入るかもしれない。」
ウィルソン氏によれば、投資家は10-15%の下落を待ち望んでおり、そのあたりで押し目買いを狙っているという。
同氏は、その望みはかなえられないだろうと予想している。
ウィルソン氏は、経済・市場をサイクルと捉えて予想を行うのを好む。
同氏が強気ということは、新たな景気サイクルに入ったということなのか。
どうやらそうでもないようだ。
ウィルソン氏は、景気後退入りをむしろ予想していると述べている。
しかし、それでも弱気にはならない。
「最終的に幅広い景気後退、労働サイクル(悪化)となっても、株式市場が4月の底値に近付くとは思わない。
FRBが迅速に行動できるからだ。
そして、市場はパブロフの犬になる。」
ウィルソン氏は従前から、長期金利が4.5%を超えると株式・金利の相関がマイナスに転じ、逆もまた然り、と指摘・予想してきた。
しかし、現在、市場にはすっかり楽観が戻っている。
同氏の考え方も4.5%のその先が付け加わっている。
4.75%が、市場が本当に神経質になる最悪のところだ。
5%なら、私は強気になる。
そこまで行けばFRB・財務省が流動性注入や財務長官が述べるような手段で介入するからだ。
だから、その事態は管理できると楽観している。
最近ではすっかりFRBプットだけでなく財務省プットまで(少なくとも市場関係者の間に)確立されているようだ。