ビル・グロス氏が、下院共和党が目論む民間財団への増税について悲鳴にも似た言葉をツイートしている。
おお
私の理解が正しいなら、財団の投資所得への税金が、ゲイツやバフェットの財団のように超大手の場合で1.39%から10%へと、驚くほど引き上げられる。
こんな環境では、財団でお金を保有したり、財団に寄付したりする理由はなくなってしまう。
それだけじゃない。
グロス家の財団への税率も5%に引き上げられ、この5%分が慈善活動に寄付されなくなってしまう。
グロス氏が15日ツイートした。
これまで米国では民間財団の投資純利益に対し(2019年12月20日以降)定率1.39%の税金が課されていた。
それを下院共和党が大幅に引き上げようと準備を進めているという。
資産規模別に
資産1,000百万ドル: 10%
資産250-1,000百万ドル: 5%
資産50-250百万ドル: 2.78%
資産50百万ドル未満: 1.39%に据え置き
との案が話し合われているという。
確かに民間財団については相続税・贈与税の抜け道として用いられている面があり、手放しで称えられるものでもない。
子供が親の資産を相続すれば税金がかかるが、親が財団に寄付をし、子供が財団を引き継ぎ(高額の報酬を得れば)大変な税負担の軽減になってしまう。
その一方で、最終的に資金のほとんどが慈善活動に渡るのなら許容すべきとの考えにもそれなりの説得力がある。
その場合、財団への課税引き上げは、税収増の分だけ政府が慈善活動から資金を奪う結果になる。
この構想には保守系のNPO、Philanthropy Roundtableも強く反発している。
「この寛大さへの課税は経済性が悪いだけでなく、悪い統治・悪い政治でもある。
市民社会を弱体化し、慈善活動から資金を吸い上げ、寄付の意図を侵害し、連邦政府支出のさらなる膨張以外何も生まない。
議員は、この悪意による案が米国のフィランソロピーの状況に不可逆な害を及ぼす前に破棄すべきだ。」
支持基盤の一部であるはずの保守層からもこうした反対が出ているのに、なぜ共和党はこうした案を進めようとしているのか。
Politicoが思惑を伝えている。
「特にヴァンス副大統領は、フォード財団のような大規模な機関を名指しし、2021年タッカー・カールソン(訳注:右派コメンテーター)に対し、彼らが『基本的に米社会のガンであり、慈善を装っている』と話した。
ヴァンスによれば『彼らは危険な人種理論に資金供与し、愚かなレイシズムに資金供与する。』
『米国は、国を破壊し、それを慈善と呼ぶ人たちを積極的に補助している。』」
多分に極右思想と通じるところのあるレトリックだ。
恐ろしいことだ。
米国の保守層はここまで分断されている。
トランプ政権の財政資金の使い方とは(リベラル色の強い有名大学への補助金凍結と同様)政権のイデオロギーのためのものであるらしい。
一方で、トランプ大統領は下院共和党に富裕層への増税を検討するよう働きかけている。
このテーマについても大統領の発言は右往左往してきたが、現時点では増税を支持しているようだ。
増税の内容には、かねてから問題視されてきた投資運用者のキャリード・インタレストにかかわるものも含まれているというから、こちらは少し期待したくなるところだ。
まだまだ眉をひそめたくなるところの多いトランプ政権だが、第2次政権が第1次政権にくらべ見違えるほどよくなったことに驚いている人も多いのではないか。
いずれにせよまだ3年半以上残っている。
大きく化けてくれることを期待しよう。