アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、集中投資と分散投資の使い分けについて解説している。
当たり前の話ではあるが、論理的に説明されており、示唆の多い内容だ。
ダモダラン教授がMotley Foolで、ファンダメンタリストの投資判断の2段階を語っている。
- 対象銘柄に対する価値評価
- 株価が価値に近づくかの見通し
どんなに最善を尽くして株式の価値を評価して、その価値の正確さに自信を持って投資したとしても、他の市場参加者がその価値の方向に株価を動かさなければよい結果にはならないというわけだ。
投資家なら多かれ少なかれこうした苦い経験を持っているはずだ。
ダモダラン教授はこの2段階を踏まえた上で、ポートフォリオを集中させるべきか、分散させるべきか論じている。
これらの側面の一方あるいは両方についてより不確実と感じるほど、ポートフォリオを分散させなければいけない。
両方についてより確実と感じるほど、集中させなければいけない。
まずは1つ目の価値評価。
ダモダラン教授は《バリュエーション学長》の異名を取るように、価値評価で高名だ。
多くの専門家がしり込みするベンチャー企業・グロース銘柄についても積極的に価値評価に取り組み、実際に投資してきた。
こうした銘柄群の価値評価では不確実な要素が避けられない。
さらに、個々の投資家にはコントロールできない2つ目の要因が残っている。
「私が投資する銘柄群では、ポートフォリオに30、35、40銘柄が必要だ。
(評価した)価値が不確実であり、価格が価値に向かって動くことが不確実だからだ。・・・
成熟した銘柄群なら5銘柄でもいいかもしれない。」
ダモダラン教授は、株価を価値に寄せるような「触媒」を与えうる成功したアクティビスト投資家でもない限り、2つ目の要因をコントロールすることはできないという。
さらに、株価は投資環境にも大きく依存する。
タリフマン・ショックに代表されるように、世界の投資環境はいつになく不確実性が高まっている。
過去ポートフォリオに6、7、8銘柄を入れていたのなら、おそらく今は20銘柄ほどを入れるよう再検討すべき時だ。
ダモダラン教授は、パッシブ投資家とアクティブ投資家の違いについても言及している。
それは、分散された指数をトレースするか否かの違いではないようだ。
文字通り、能動的に投資するか否かの違いにあるのだという。
必ずしもパッシブ投資、インデックス投資をする必要はないという。
しかし、アクティブ投資家であっても、投資判断に不確実性が高い場合には分散が必要とのメッセージだ。
ダモダラン教授のパッシブ投資家とアクティブ投資家の違いについての見解は、ウォーレン・バフェット氏のそれと同じものだろう。
同氏は、自身では集中投資を行い、一般の投資家にはインデックス投資を奨める、いわばダブル・スタンダードだ。
要は、能動的に投資できるか、それで勝てるかどうかの違いなのだろう。
バフェット氏の場合、不確実性やリスクへの対処に少し違いがあるのかもしれない。
同氏の場合、ダウンサイドが高まったと見ると、分散ではなく、現金の積み増し、マーケット・タイミングで対応しているように見える。