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魚の釣り方を教えよう:レイ・ダリオ
2025年7月4日

ダリオ氏は、通貨安に見舞われる国の市民の貨幣錯覚について説明している。

「(富が減ったことが)認識されない理由とは、通貨が減価している国の人々が・・・購買力と富の低下を見ていないからだ。
彼らは資産の価値を自国通貨で測るため、物差しである通貨の価値が低下しているにもかかわらず、資産が上昇したとの幻影を見ている。」

まさに《円安バンザイ》を続けてきた日本人にも当てはまる観察である。
こうした貨幣錯覚こそ、中長期で有害な政策が歓迎される一因になっているのである。

ダリオ氏は、外国人がどう見ているかについても言及している。

「米ドル建て債務を保有する外国人にとっては(米ドル安の影響は)明白かつ痛みをともなうものになる。
この心配が募るにつれ、外国人は保有債務の通貨であるドルにヘッジをかけ(売り)、あるいは債務を売却し、通貨、債務またはその両方が弱くなることにつながる。」

これもまた、米国だけでなく日本で顕著に見られた現象だ。
外国人が日本への投資を積極化している、との煽りは多いが、円が買われるわけではない。
外国人の日本への投資のほとんどが為替ヘッジ付きであり、このヘッジとは円売りを意味するからだ。
これらは円相場に対し中立だが、それも外国人による新規投資の話に限られる。
肝心の日本人が円資産から外貨資産へ乗り換えるなら、円は大いに売られてしまう。

ダリオ氏は「ハードマネー」による支持のない莫大な債務について、1971年ニクソン・ショック以降ボルカー・ショックまでのスタグフレーション期との類似を指摘している。
それが富、金融市場、政治環境に大きな変化をもたらしたと解説し、類似のとても大きな変化が起こる可能性があると述べている。
そして、そうした時代にはハードマネーを持つべきと奨め、自身が金を保有し、いくらか暗号資産を保有していると明かしている。
同氏は詳しくは語らないものの、金と債券の期待リターン、それぞれの需要、両者間の分散効果に注目すべきと書いている。

私の知見では、ポートフォリオのリターン/リスク比率改善のためには長期的に見て約15%の金保有が効果的な分散になる。
物価連動債にも同じ効果があり、典型的なポートフォリオに両方を加えることは検討に値する。

ダリオ氏はここまで具体的な数字を述べた上で、本SNS投稿の目的が具体的な推奨ではないと結んでいる。
その目的は「魚を提供するのではなく、どう釣ればいいのかを教えること」にあるのだという。
ヒントは出すから、最後は自分でよく考えなさい、ということだろう。


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