資産市場が高位にあるように見える時ほとんどの政策決定者・市場参加者にとって最大の関心事の1つはバブルがいつ弾けるかにある。
いつ貨幣需要は貨幣供給を上回るのか、ダリオ氏は自身の定義から導かれる当然の結論を書いている:
利上げや信用の引き締めは必要なお金を得るための資産売却の最も一般的な原因だが、お金の需要、例えば富裕税、やお金を得るための金融資産売却をもたらすあらゆる理由がこの力学につながりうる。
金融引き締め、あるいは金融市場の引き締まりがバブル破裂の引き金を引くことはいわばコンセンサスだろう。
ダリオ氏は、それ以外にもバブルを破裂させる可能性として富裕税を例示している。
お金に比べて富がはるかに多く存在し、さらに人々の間の富の格差が存在するとき、過去(ニューディールなど)にも富の移転を強化する政策が採用されてきたと紹介している。
近年、米国で議論されている富裕税もその1つ。
富裕税が課され、保有者が十分な手元現金を持っていない場合、資産売却を強いられ、バブル破裂のリスクが増す。
ダリオ氏は富裕税について3つの問題点を挙げているものの、それでも含み益に対する5-10%の課税なら許容可能との考えを示している。
同氏が含み益への課税と断っているのには理由がある。
資産規模に対して許容可能な税額の割合がかなり小さいと思われるためだ。
「米家計のバランスシートには約150兆ドルの総資産があるが、うち現預金は5兆ドル未満だ。
したがって、仮に(総資産に対し)年1-2%の富裕税が課されると、1年あたりの(納税)必要資金は1-2兆ドルになる。
流動性のある現金はそれに対し十分な規模にない。」
ダリオ氏は、資産額に対し年1-2%でも資産売却を引き起こし、バブル破裂につながると予想する。
同氏の結論は3つだ:
「富裕税は
1) 未公開株・公開株の売却を強いる引き金となり、バリュエーションを押し下げる
2) 信用に対する需要を高め、富裕層や市場一般の借入れコストを押し上げる可能性がある
3) より税制面で有利な国外への富のオフショアリング、移転を促す」
ダリオ氏は特に未公開株、ベンチャー株、集中投資に対して課税されれば、これら悪影響が強く出て来ると懸念している。
そもそも、今はバブルなのか?
もちろんバブルか否かはバブルの定義次第なのだが、このSNS投稿の後のCNBCでダリオ氏はこう言っている:
「間違いなく市場にはバブルが存在する。」
ここでの「バブル」の定義は、先述のお金と富の不均衡に注目したものだ。
ダリオ氏は独自のバブル指標も現在80%と高水準にあると明かした上で、現状を次のように語っている。
現在バブルの領域にある。
でも、バブルを弾けさせるものはない。
金融政策は緩和方向にあり、富裕税もまだアイデア段階。
いまだ貨幣の需給逼迫のトリガーは存在しないが、油断はすべきでないと言いたいのだろう。
