アスワス・ダモダラン教授はこれまで各国のリスクフリー金利や株式リスクプレミアム等を定期的に計算し公表してきた。
場合によっては、最高のソブリン格付けを受ける米国に対し、考え方を変更する必要があると示唆している。
何をリスクフリーとみなしてよいか、その対象から1つが外れる可能性があるのだ。
「私が主張してきたのは、ある通貨のリスクフリー金利とは必ずしもその通貨の国債金利ではないということ。
問題のソブリン債がデフォルト・フリーでないと思われる場合、リスクフリー金利を計算するためにデフォルト・スプレッドを国債金利から差し引く必要があるということ。
この原則に基づき、米ドルのリスクフリー金利として米国債金利を用いてきたやり方を再検証し、リスクフリー金利計算のために米国債金利からデフォルト・スプレッドを差し引くことを早急に行わないといけないかもしれない。」
全くの正論だが、少々細かいところに入ってしまっているようにも思える。
そこの誤差は他のところの誤差に比べると、まだ十分に小さいのではないか。
再検証の結果を待とう。
ダモダラン教授は4月の資産クラス間の相関について2点に注目している。
- 米国株と米国債が4月の大半で同じ方向に動いた。
- 金とビットコインが株価と同じ動きをしたが、金の方が相関が高い。
サンプルの小ささを断った上で、ダモダラン教授は次のような仮説を立てている。
月の大半の市場変動はパニックによるものというより、通商障壁・関税・政治混乱が高まる世界を反映して投資家が企業を再評価しようとしたことによるものの方が大きかった。
程度の問題だろうが、この考えには賛同しかねる人も多いのではないか。
関税のリスクが完全には払拭されないまま株価だけが元にもどったことをどうとらえるべきなのだろう。
ただし、関税のリスクが拡大・縮小するにつれ市場が変動したという点についてはそのとおりだ。
その意味で、市場はパニックというよりそこそこ合理的だったのだろう。
ダモダラン教授はまた、コモディティやハイイールドの下落について世界経済の成長鈍化を示唆していると書いている。
もちろん、教授はいつもの毒舌のサービスも忘れてはいない。
市場が月を通して上げ下げする中、アクティブ投資の付加価値に関わる議論が活発化した。
こうした時期(高ボラティリティと危機)こそファンド運用者の『賢人の教え』や『時宜を得た判断』が投資家をダウンサイドから守るという、アクティブ運用の奨めを多く聞いた。
私はその逆を奨めたい。
4月に投資家のポートフォリオに及んだダメージの程度が、投資家がどれだけCNBCを視聴し市場の専門家の推奨を聞いた(あるいは読んだ)かと直接的に比例したという方に賭けたい。
これでCNBCの常連なのだから立派なものだ。
いつもCNBCでのダモダラン教授の発言を「賢人の教え」や「時宜を得た判断」として受け取っているFPからすると複雑なところだ。
ダモダラン教授が言いたいのは、他人の話を真に受けて右往左往するなということだろう。
S&P 500が9営業日続伸を開始する前の4月20日、教授は押し目買いの是非をタイプ別に論じていた。
ファンダメンタルズに基づく投資という信念を示し、さらにテック株に積極的な姿勢も示していた。
実際、教授は株価評価に基づいてBYDを買い、PalantirとMercado Libreに買いの指値を入れていると明かしている。