ハワード・マークス氏は、過去16年の好況・強気相場の基調が市場を楽観(≒放漫)に振り、今まさに逆の悲観(≒慎重)に振れさせているとのイメージを持っている。
「多くの誤った判断は・・・ブーム(好況)で作られバスト(不況)で露呈する。
これは永遠にそうあり続ける。
これは偉大な銀行界の格言にとても端的に総括されている:
『最悪の融資は最良の時に生まれる。』」
誤った判断は(法律用語でいう)善意によるものもあれば、悪意によるものもある。
「よい時期に愚かな投資につながる過信、不用心、不注意は、同時に詐欺的やり方にとって完璧な状況を提供する。
リスク許容度、FOMO(取り逃す恐怖)、不適切なデューデリジェンス、熱狂的な買いは金融詐欺に豊かな土壌を提供する。
浮かれた時期、みんな『真実であるには良すぎる』ではなく、『どうやったら参加できるか?』と問うようになる。」
マークス氏率いるオークツリーでは、昨年の初夏「少額のポジション」のあったファーストブランズについて再調査を行ったという。
決定的な証拠こそ得られなかったが、ネガティブな結論に至り、結果、難を逃れたのだという。
同氏は改めて適切な調査・分析の重要さを強調している。
マークス氏は一貫して、マクロ予想に基づく投資判断を行わず、ミクロ分析による銘柄と投資方法の選択を続けてきた。
同氏からすれば、今回の振り子の振れにより貸し手・投資家が気を引き締めるなら「前向きな展開」だ。
市場にとっても同氏の仕事にとってもプラスなのだろう。
「よい時期に作られた誤りが露見するにしたがい、これからはより『興味深い』時期をなっていくだろう。」
再びディストレストでチャンスが到来するとの予感だろう。
仮に読み通りに信用スプレッドが大きく開いていくなら、ご相伴にあずかる機会も訪れるのだろうか。
いずれにせよ、この分野、運用者の手腕・見識が重要そうだ。
