オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が、最近米市場で心配されているいくつかの破綻、不正の事例についてコメントしている。
私は必ずしもこれがトレンドの始まりだとは考えていない。
これは非投資適格債務市場全体やプライベートクレジット市場全体が悪であるとするものではない。
むしろ、これは人々が大いに気にする利回りスプレッドの存在に理由があることを思い出させてくれるものにすぎない:
非投資適格債務には信用リスクがあるということだ。
マークス氏がMemoで、ファーストブランズやトライカラーの破綻に端を発する信用不安について書いている。
(特にトライカラーがサブプライム自動車ローン会社だったこともあり、2007年のサブプライム危機を連想させるところがあった。)
これら事例が個別の問題であって全体の問題ではないとし、現状「システミック」なリスクを顕在化させるものではないとの考えだ。
同氏は、クレジット投資においてデフォルトは確率現象であると強調している。
今回のMemoのタイトルは「炭鉱のゴキブリ」。
《炭鉱のカナリア》と《1匹ゴキブリがいたらもっとたくさんいる》という言い回しを組み合わせたもの。
カナリアには罪がないが、炭鉱に問題(有毒ガスや酸欠)があれば死んでしまう。
かわいそうなことに、ゴキブリの場合はその存在自体が悪とされている。
つまり、ファーストブランズやトライカラー等の事例について、見通しの悪い環境の中で悪い存在が温存されていたとの趣旨だろう。
マークス氏は決して状況を楽観しているわけではない。
今回の信用不安は「システミック」ではないが「システマティック」な現象だという。
どうシステマティックかと言えば、同氏の持論どおり、市場心理、特にリスクの感じ方が振り子のように左右に極端に振れたという意味だ。
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