ジョセフ・スティグリッツ教授が欧州でのフォーラムで、米国に対する欧州の対応のしかたについて嘆き、警告している。
正論しか語らないスティグリッツ教授だけに、時として理想論過ぎて意味をなさないこともあるが、このインタビューでの発言はいずれも正論かつ建設的に聞こえてくる。
これもひとえに批判の対象の見事なまでの悪役ぶりによるものだろう。
スティグリッツ教授の言語は整っており、かつ理解しやすい。
原典(CNBC)に当たることをお奨めしたい。
ここでは胸に刺さるいくつかの指摘を紹介するに留めよう。
米欧の通商合意の本質が通商だけでなく防衛にまで及んでいる点について
「もしこれが単に通商ならば、欧州経済の規模、米経済の規模、欧州の貿易額、米国の貿易額から見れば、欧州は米国との貿易で支払いを受けるべき側だった。」
欧州が第1次トランプ政権での教訓を生かせなかったことについて
「トランプとのディールが書かれた紙ほどの価値もないことを、欧州は覚えておくべきだ。
・・・ディール直後に・・・米国は『ところで欧州はすべてのデジタル規制を撤廃しろ』と言ってきた。」
米国は今後も後出しで欧州各国の主権を犯すような要求を続けるだろうと警告している。
戦後、米国が作り上げてきた国際社会での法の支配を自ら反故にしようとしていることについて
「米国は、自国の豊かさに貢献してきた世界のサプライチェーンからより多くの価値を搾取しようとして・・・それを殺してしまっている。・・・
私たちは、生活水準の向上のペース鈍化、おそらくしばらくは悪化を甘受しなければいけないだろう。」
米ドルの基軸通貨としてのステータスについて
「もしも他によい世界的な通貨が存在していたなら、ドルはその地位を失っていただろう。・・・
本当のところ私はドルがある意味うまく行っていることに驚いている。」
「マールアラーゴ合意」の提唱者である大統領経済諮問会議委員長がFRB理事を兼職することについて
「経済学を知らず、低金利を愛し、インフレ・高インフレをあまり気にせず、関税がインフレに及ぼす影響を気にかけない不動産屋によって政治が支配されている。
そして彼(新たなFRB理事)はいわゆるマールアラーゴ合意を書いた人物だ。
マールアラーゴ合意は、ドルを下落させるにはすばらしい提案だ。
もっと悪いことに、他国に対し、保有する米国債をゼロ利回りの100年債と交換するよう求めている。
すばらしいディールだ。
応じなければ、米国による軍事的庇護を失い、関税が課されるんだ。」