ダモダラン教授は、自身の成果物(講義、論文、データ等々)をほぼすべて制限なく公開してきている。
教授は、今後AIによる模倣能力がどんどん向上すると予想している。
それが誠実に正直に運用されるなら別だが、歪められ悪しき目的に用いられることを心配し、フェイクや詐欺から身を守るための方策を提案している:
- 見た目(フェイク画像・映像)で信じ込まない
- 詐欺や誘導につきものの尊大や誇大を避ける
- 人の話を聞く前にテーマについて事前準備を行う
- ROMOとFOMOを避ける。
- ROMO(regret over missing out): 逃したチャンスへの後悔
- FOMO(fear of missing out): 乗り遅れる恐怖
ダモダラン教授は、投資家の側に注意を呼び掛ける。
詐欺師を犯罪者、騙される方を被害者と考えることが多いが、現実には詐欺とはタンゴのように両方が求めあうようなところがある。
詐欺師の技術が奏効する理由は、騙される側が反応しようとする感情(恐怖、貪欲)をくすぐるためだ。
AIはそれをただただ容易にする。
規制当局や政府に保護を求めても、偽りの気休めにしかならない。
最良の防御は『買い手責任』あるいは『買い手は用心しろ』だ。
景気・相場がよくなれば詐欺が増え、景気・相場が峠を超えると詐欺が表面化していくのは世の常だ。
ダモダラン教授の警告は今投資家が肝に銘じるべきことだろう。
その一方で『買い手責任』とは買うまでの話であるということも忘れてはいけないだろう。
読者の周囲で残念ながら騙される人が出てきても、事後に責めてはいけない。
ほとんどの詐欺被害者は自分を自らひどく責めるものだ。
すでに胸がつぶれるほどつらい思いをしている人を、さらに責める必要はない。
(もちろん、懲りずにバカなものに手をつけようとする者はその限りではない。)
だからこそ、きつく言うなら事後でなく事前でなければいけないのだ。