ハワード・マークス氏は投資の基本中の基本であるリスク/リターンのトレードオフについて指摘する。
「すべての投資家はいつも自分が何を求めているのか自問しなければいけない。
潜在的リターンを最大化したいのか、直面する不確実性を最小化したいのか?
一度に両方は望めない。」
マークス氏が推測するように、米国株市場がもしも「バブルの初期」であるなら、裏返せばこの先もまだ騰がるということになる。
これが「潜在的リターン」だ。
(もしも「バブルの初期」でなければ、このリターンは最後まで「潜在的」で終わるかもしれない。)
一方で、米政権の不規則な行動は、米市場にかつてない「不確実性」を及ぼしている。
マークス氏は二兎を追わず選択が必要とし「世界の状況が変化するにつれ選択肢を変えていくのが合理的」と話している。
同氏は先月まさにこれを実行したわけだ。
マークス氏は、米クレジット市場以外の選択肢にも触れている。
「もしも米財政が大問題と信じるなら、当然ながら外国通貨に投資することもできる。
米債券、国債・社債でなく、欧州・スイス・日本の債券に投資することもできる。」
ただし、マークス氏はこうした選択が難しい作業・判断である点も認め、チャーリー・マンガーの「それが簡単と考える人は愚か者だ」との発言を紹介している。
同氏はこれを自分の言葉で言い換えている。
「世界で最悪なのは、複雑なことを見過ごし物事が簡単だと思うことだ。
そうすれば、大けがをすることになるだろう。」
マークス氏は、現在の米国が伝統的なノーマルさを欠いていると話す。
しかし、トランプ後の大統領たちがよりノーマルな方向に回帰する可能性も見ている。
もしもそうなら、あと3年余りで米国はある意味での正常化を始めることになる。
マークス氏は視聴者にアドバイスする。
もしもS&P 500に投資すれば、今後10年のリターンは1桁の低い方のパーセンテージになるだろう。・・・
私はパニックしない。
このゲームに参加し投資するなら、最も重要なのはパニックしないこと。
仮に感情に支配されてしまえば、間違ったことをする。
私はパニックしていないが、現在は心配しないでよい時ではない。
先月のMemoによれば、マークス氏の「防衛体制」はまだ6段階中の5段階目にすぎない。
それでも、パニックを引き起こしうるようなイベントがいつでも起こりうると考えているようだ。