ケン・フィッシャー氏が、インフレについてのマネタリスト的な信念を語っている。
「インフレを引き起こすのは、世界の中央銀行による貨幣の創出にある。
みんな『お金を印刷する』というが、実際には印刷はしない。
財やサービスの増加率より速いレートで貨幣を創出するのだ。」
フィッシャー氏が自社ビデオで、原油価格上昇がインフレを再上昇させるかについて解説している。
同氏によれば、インフレが上昇するか否かは原油価格によるのではなく各国中銀の金融政策によるのだという。
フィッシャー氏は「需要の価格弾力性」というキーワードで、原油価格上昇が引き起こす直接の影響を説明する。
「とても重要で代替品への置き換えが難しい原油のようなモノの価格が上昇する場合、貨幣量が以前の増加率のままなら・・・代替可能なモノの消費を減らすよう強制することになる。」
原油には代替品があまりないため、原油価格が上昇しても需要量を減らす余地は小さい。
フィッシャー氏は、車で走る距離を減らしたり、エアコンの出力を緩めたりするかもしれないが、それにも限度があると指摘。
一方、(石油由来でも)チューイングガムなら、噛むのをやめて節約することもできるはずという。
全体の出費を抑えるために、そもそも消費を減らす人も多い。
(減らせるモノには需要面でデフレ圧力が加わる。)
原油価格上昇に対し、消費者は節約、消費内容の変更で対応することになるわけだ。
「これはGDPを変えるわけではなく、GDPを再構成することになる。」
つまり、原油価格が上昇しただけで貨幣量のトレンドに変化がない場合、GDPの内容が変わっても規模は変わらず、全体としてはインフレにはならないとの主張だ。
しかし、現実には原油価格上昇の際、経済を支えるとのお題目で金融緩和が行われることがあるという。
中央銀行が(金融緩和を)せざるをえなくなり、そうする場合、重大な物価上昇に対して貨幣量の増加で対処するとの言葉がしばしば語られ、銀行に貸出を増やすよう促すことになる。
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でも、そうしないなら、インフレは上昇しない。
マネタリズムでは、貨幣量の伸び率が高まらない限り全体のインフレへの影響は出ないと示唆するのだ。
フィッシャー氏は金融政策のみについて語っているが、これには当然財政政策も関係してくる。
日本の失われた20年、30年においては、金融緩和だけではマネーサプライが増えない局面があった。
金融緩和でマネタリーベースを増やすだけでは、貨幣の流通速度が下がり、マネーサプライが増えない状況が見られた。
銀行への資金注入やパンデミック時の財政出動など大規模な財政政策が打たれると、突然お金が回り始め、インフレ率が高まることがあった。
デフレが現実だった時代、こうした財政政策は理に適ったことだったが、デフレからディスインフレに改善した後での積極財政は、目標を超えるインフレ上昇という副作用を引き起こした。
原油が高いから財政を使って補助金を出す、という政策が日本では《インフレ対策》と呼ばれている。
しかし、それは典型的なインフレ助長策と呼ぶにふさわしいやり方だ。
こうした政策が望まれ、続く限り、インフレの魔物はビンの中に戻ってはくれないだろう。
