ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏が、米中「関税交渉」が「持続不可能な過剰」を減らすことに期待をかけている。
「米中が『関税交渉』を行うことについて喜んでいるが、驚きはない。
この交渉は、貿易の枠を大きく超えたものとなろう。
夢の中で私は、米中が持続不可能な過剰を持続可能な水準まで減らす、美しいリバランスを進めるものと想像できる。」
ダリオ氏が自身のSNSで、米中貿易摩擦低減の兆しを歓迎した。
ダリオ氏が指摘する「持続不可能な過剰」とは何か:
- 米国が中国等から借りた金で安い財を買う。
- 米国のモノづくり能力が下がり、外国依存を強める。
- 米国の対外債務が積み上がる。
ダリオ氏は、この過剰を減らし、世界の軌道を持続可能なものに移行できると主張する。
「協力と有能な意思決定によって、持続不可能な不均衡の大幅低減が秩序だった形で大いに進展しうる。・・・
このリバランスは、特に新たな世界秩序がどうなるか考えれば重要だが、秩序だったやり方で起こりうるし、そうでないといけない。」
理想家のダリオ氏らしい考え方だ。
しかし、世間にはより現実的・悲観的な見方をする人も多いのではないか。
そもそもダリオ氏は大きな超長期の債務サイクルと覇権国・基軸通貨のサイクルを重ね合わせて論じてきた。
歴史上何度も似たことが繰り返してきたというのが同氏の口癖だ。
貿易赤字や対外債務拡大は基軸通貨国の必然であり、世界経済成長のために必要でさえある。
それが持続不可能になると、覇権国や基軸通貨の交代が起こるとの歴史観だ。
問題は、これが持続可能たりえるのか、サイクルでなくなるケースがありうるのかだろう。
ダリオ氏はそれが可能と主張している。
最近では「3%、3面の解決策」を提案し、その中で米財政赤字をGDPの3%以下に削減すべきと提言している。
財政赤字の数字1つとっても、現時点で実現可能な数字とは到底思えない。
今回のSNS記事でも、冒頭の引用中の「夢の中で」との言葉の他、所々に分の悪さを感じさせるところがある。
これは持続不可能な不均衡であり、いずれにせよ最終的には協調的でよく管理された形またはクラッシュで終わることになる。
覇権国や基軸通貨が興亡のサイクルを繰り返してきたのは人間のサガによる必然なのではないか。
理想など実現しえないのではないか。
世界がなしうるのは、現サイクルの寿命をわずかばかり引き延ばす程度のことではないか。
もっともあまり心配し過ぎるのもよくない。
往々にして頭のいい人の予想とは早すぎるもの。
人も社会も理屈で考えるよりはるかに長く粘るものであることも忘れてはいけない。