先述の現金保有と同じ文脈で、今回ダモダラン教授はビットコイン保有会社の是非を論じている。
企業によるビットコイン保有は原則禁止にすべき
ダモダラン教授は、ストラテジー社が「ソフトウェア会社というよりSPACまたはクローズド・エンド・ファンド」であるとし、経営者マイケル・セイラー氏はビットコインの運用者なのだと現在の構図を解説した。
その上で、原則的にこうした上場企業には反対との意見を述べている。
「一般的なルールとして、ほとんどの企業にとって現金をビットコインで運用することが悪いアイデアであるだけでなく、一歩進んで禁止すべきであると私は主張する。
仮に私がビットコインに対し強気であったとしてもこう主張することを付言したい。
この主張は、現金で金、ピカソの絵画、スポーツのフランチャイズを買おうとしている企業にも同様に当てはまる。」
ダモダラン教授は理由を5つ挙げている:
- 価格が不安定なビットコインは現金保有の目的を満足しない。
- ビットコイン保有が主業の妨げになりうる。
- 経営者は概して最悪のトレーダー。
- 株主がビットコインに強気なら、自ら保有すべき。
- 経営者の職権を不当に拡大しかねない。
こうした原則論とともに、ダモダラン教授は、ビットコイン保有が許容されうる例外を4つ挙げている:
- 経営者・企業が卓越したトレーディング能力を有する場合。
- 決済サービスや交換所など、ビットコインが商売の要素になっている場合。
- その企業の国の通貨が破綻している場合。
- ミーム企業。つまり、すでに本業が破綻している場合。
ただし、この例外に該当する場合でも、ビットコイン保有を許容する前にルール作りが必須だと書いている:
- 株主の賛同
- ビットコインの保有・売買についての透明性(開示)
- 明瞭な時価評価
いずれも至極常識的な指摘だろう。
煎じ詰めれば、ビットコイン保有を事業モデルにするなら、投資信託並みの透明性が必要となるということ。
さもないと、バブル後によく発覚するように、投資詐欺や投資家の側の認識不足が後になって表面化しかねない。
(次ページ: 機関投資家・企業による保有がビットコインの魅力を奪う)