ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏が、聞いているだけでうんざりするような暗い未来を示唆している。
「これら問題(訳注:関税にかかわる問題)に対処しなければならない多くの人々から、もはや遅すぎるとの声を私は聴いており、その声はどんどん増えている。
例えば、米国への輸出者や他国から米国への輸入者は、米国との取引を大きく減らさないといけないと言っており、関税がどうなろうと問題はなくならず、急激な米国との相互依存の縮小こそ準備すべき現実だと言う。」
ダリオ氏が自身のSNSで、トランプ関税が引き金を引いた、米国をめぐる世界情勢の変化は元には戻らないと主張した。
その最たる例は、米国や中国との商売上または金融上の関係であり、今回の米中交渉の結果にかかわらず、そうした取引に関与する人々は他の選択肢を考えざるをえなくなっているという。
米国を迂回しようとする国が増えているのだ。
ダリオ氏は、現状起こりつつある当然の帰結を単純な方程式で提示している:
過剰な不均衡 + 脱グローバル化 = 貿易と資本不均衡の縮小
ダリオ氏の状況認識は相当に差し迫ったもののようだ。
「私たちは、容易に見いだされ測られる持続不可能な悪いファンダメンタルズによって、貨幣の秩序、国内政治と国際社会の秩序が崩壊する瀬戸際に立っている。」
ダリオ氏は従前どおり「『美しい』デレバレッジとリバランス」を行えば「最悪のやり方で対処する場合よりはるかによい結果になる」と主張する。
デレバレッジとは一国のバランスシートにおいて債務を圧縮することを指し、リバランスとは多国間における貿易・資本の不均衡を指しているようだ。
いずれも『美し』く行われる必要があるとし、同氏は著書等でしばしばやり方を提案してきた。
しかし、これまでのところ現実はそうなっておらず、「取り返しのつかない悪い結果につながる」ようなことが行われていると嘆いている。
「最悪のやり方で対処する場合よりはるかによい結果になる」と言っているところを見ると、ダリオ氏は「貨幣の秩序、国内政治と国際社会の秩序」の変化自体は不可避と考えているのだろう。
問題は、それが「崩壊」になるのか、ある程度秩序だった《禅譲》になるのかの違いなのだろう。
同氏はこれまでも、こうした変化が長い歴史で繰り返されてきたと言い続けてきた。
今回も単に《歴史は繰り返す》、あるいは韻を踏んでいるだけなのだろう。
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