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レイ・ダリオの2025年レビューと今後の見通し

以下、ダリオ氏の米市場見通しが語られているところを紹介しよう。


まずは米国債市場。

「(10兆ドル近い)莫大な債務がこの先借り換えを迎える。
同時に、FRBは実質金利を押し下げる方向に向かっているようだ。
これら理由で、特にイールドカーブの長期側で債務性資産の魅力は低く、イールドカーブのさらなるスティープ化が起こりそうだ。
ただし、FRB金融緩和が、現状の市場価格に織り込まれているほど大きくなるかには疑問符が付くと思う。」

ダリオ氏は、インフレまたはドルの不人気によりFRBがそうそう利下げできないと見ているのだろう。

米国株については、企業利益の労働分配についての言及がある。

「企業利益の改善の主因は経済のパイ(つまり売上)の増加であった。
改善分のほとんどは企業(つまりそれを保有する資本家)が受け取り、労働者は比較的少額を受け取った。
・・・市場は現在この増加が大きいと織り込んでいるが、左派勢力はパイの配分を大きくすることを目指している。」

今後の政治情勢によっては、企業利益の分配のあり方が変わる可能性があると指摘したものだろう。
一方、株価についてバリュエーションの観点から検証した部分もある。

「知られているとおりPERは高くクレジットスプレッドは低く、バリュエーションは伸びきったように見える。
歴史が道案内となるなら、これは将来の低い株式リターンの前兆だ。
株式・債券について通常の生産性上昇と利益上昇を仮定して期待リターンを計算すると、
長期の株式期待リターンは約4.7%(下位10%未満)となり、現在の債券リターン4.9%と比べとても低い。」

株式やクレジットのリスクプレミアムがすでに縮小しているため、今後は拡大の可能性の方が高く、リターンには逆風になるとの指摘だ。
なお、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティなどプライベート市場の投資では流動性が低いことから、流動性プレミアム拡大による価格下落の可能性が高いとも述べている。

ダリオ氏は、米政治が今後いっそう見通しにくくなると暗示している。

「現在上位10%を占める資本家はインフレを問題と見ていない。
一方、大多数(下位60%)の人たちはインフレに押しつぶされていると感じている。
お金の価値の問題、言い換えるとアフォーダビリティの問題は、おそらく今年のNo.1政治問題となるだろう。
共和党は(中間選挙で)下院を失い、2027年は混乱の年となり、2028年の(大統領・議会)選挙は左右の激しい激突となる興味深い選挙となるだろう。」

ダリオ氏は、トランプ大統領が自由の効く1年目「すべて資本主義に積極的に賭けた」と述べ、米国が「自由市場資本主義から政府主導資本主義へ」変化したと回顧した。
徐々に政権・共和党の勢力が弱まると予想される中、左派勢力との間で「市場・経済に影響を及ぼすであろう富とお金をめぐる戦い」になると予想している。

ダリオ氏の書きぶりからは、米国における貧富の差の拡大に対する危機感がうかがわれる。
その一方で、同氏は従前から、富裕税が経済・市場に及ぼすマイナス面にも警告を発している。


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