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レイ・ダリオが心配する危機の時間軸

ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者レイ・ダリオ氏が、ワシントンで与野党議員と米財政について議論したことを明かしている。

「面談した両党の人々すべてが、以下の点に同意した:
財政赤字を対GDP比3%に抑えなければ大きな債務/経済危機に陥る可能性が高く、したがって3%目標で合意すべき。
歳出削減と税収増だけで財政赤字を3%に抑えるためには、それら両方が必要となり、それはあまりにも大きく衝撃的になる。
政治家がそう信じていても、公言すれば失職してしまうため、公言できない。」

ダリオ氏が自身のSNSで書いている。
(ダリオ氏は、財政赤字(対GDP比率)を4%ポイント改善し3%に抑制すれば、金利が1%ポイント以上低下すると推計している。)

これは日本の話ではなく、米国の話だ。
もっとも、日本では(国債による資金調達に変化が見られるようになった今でも)積極財政が妥当と心から考える政治家も多いのかもしれない。
もしそうなら、財政の持続性という観点から言う限り、米政治家の方が少しはましなのかもしれない。
あるいは、国を選ばず政治家のほとんどは嘘つきであるにすぎないのかもしれない。

ダリオ氏は、今のままなら米社会保障・メディケイドで2033年までに資金不足に陥ると指摘するなど、かなり切迫した危機感を滲ませている。
同氏は、政治家とともに、どうすれば政治が動くのかブレーンストーミングしたという。

「そこでのコンセンサスは、大きな危機が必要というものだった。
私は、金融環境が緊張した状態では人々は反目し合い、増税や支給削減は考えられず、受け入れられないため、問題に対処するには最悪のタイミングだと説明した。」

財政に関する限り、先進国世界はかなり絶望的な状況にあるように思える。
しかし、ダリオ氏の心は驚くほど強い。
歴史上の事実を調べ上げ、国家破綻の本を書き、半ば国家破綻を運命のように論じていながら、それでもそれが回避しうると主張し、政治・社会に訴え続けている。
ただし、その言葉にはかなりの時間的切迫感がうかがえる。

(政治家と)同意した最良の希望的シナリオは(実現と効果について迂遠ではあるが)2026年の中間選挙後まで危機が起こらず・・・

頭のいい人の予想とはしばしば早すぎることも多いから、あまり心配し過ぎてはいけないのだろう。
ただし、米市場が不思議な楽観に包まれている一方で、米経済・市場の最大の懸念事項の1つに全く改善の兆しが見えないことも事実。
米国債や米ドルへの心配はまだ長く続きそうだし、同様の心配は日本でも深刻と考えるべきだろう。
つまり、少し長い目で見れば、ドル安・円安が進みうることに注意すべきだろう。


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