ブリッジウォーター・アソシエイツがCIO 3氏の名前で、経済・市場の見通しについて投資家にメールを送っている。
現在は、同社創業以来の50年間で「もっとも劇的な変化」が進行中だという。
現代重商主義への変化は今(米国集中を生んできた)関係性への脅威となり、米国例外主義へのリスクを生んでいる。
ブリッジウォーターでは従前から、トランプ政権が火をつけ世界中が経済的自由主義から「現代重商主義」へ変化しつつあると論じてきた。
4月の「解放の日」に米国は世界に大きなショックを与えたが、世界は関税を拒否するのではなく受け入れ、それは一過性の制度ではなく継続的な制度になりつつある。
同社は「現代重商主義」がトランプ後も続くと予想する。
相手国の側も単に関税を受け入れ衰退を選ぶことは考えにくく、それぞれに何らかの重商主義政策で対応することになるという。
こうした世界における政策の変化が金融・投資の世界にどのような影響を及ぼすか、メールは端的に解説する。
重商主義政策は国内生産にインセンティブを与えることで米経済の浮揚を狙うもの(実現するかもしれない)だが、同様に海外経済での防衛・内需への投資を必要にし、世界の貯蓄者が貯蓄を取り崩すインセンティブを与える。
さらに、関税が米企業の利益を減らし、報復のリスクを高め、FRB政策を縛ることで、米国における現状のバリュエーションでの貯蓄への意欲を低下させる。
それに加え、安定的なルール作りがむしばまれる過程で、米資産に織り込まれた『制度的安定によるプレミアム』を切り下げ、過去数年の米国株上昇に大きく寄与したマネーフローをもたらした外国投資家を直接的に苦しめている。
実際、4月以降の米ドル・米国株・米国債にはそうした変化が垣間見える瞬間があった。
しかし、ブリッジウォーターによれば、予想される大きな環境変化に比べて、実際の資本・市場の変化はまだ緒に就いたばかりだという。
つまり、短期(戦術)的なチャンスはまだ大きく残されているというわけだ。
同社はいくつかを例示している:
- 世界の貯蓄者によるレパトリ
- (AI関連企業を除く)米国株への下落圧力
- 米国以外の債券の魅力
- 金上昇となりやすい環境の継続
さらに、長期(戦略)的な観点から、時価総額加重平均指数に近いポートフォリオから下げに強いポートフォリオに組み替えるチャンスだとして、いくつか例示している:
- 地域的分散、為替ヘッジ: 米国以外を選好すべき。
- 米国株: AI関連へのエクスポージャーを維持しつつ、米国株へのエクスポージャーを減らす。
- フィクストインカム: 各国実質利回りが15年来の高水準となり、株式中心からフィクストインカムも含む分散へ。