ハワード・マークス氏は、革新的技術に対する投資の基本中の基本を教えている:
ほとんどの技術の進歩は勝者総取りまたは勝者がほとんどを取る結果となる。
この力学に参加する『正しい』方法とは債務ではなく株式に投資することだ。
最終的な勝者を含むように株式エクスポージャーを分散できると仮定するなら、勝者からの莫大なリターンは敗者からの資本毀損を補って余りあるものになる。
プレーヤーが熾烈な潰し合いの競合を続ける業界では、アップサイドのある資産クラスで臨むのが鉄則なのだ。
(同じことを最近IBMのアービンド・クリシュナCEOが話していた。)
仮にバブルが崩壊する場合、ただでさえクレジット・スプレッドがタイトな現状、アップサイドのない債券等での投資は圧倒的に不利になる。
ましてや、債券等での分散投資は(バブルが崩壊することを前提とすれば)敗者を含めることにより負けを確定させることになる。
今回のMemoで、マークス氏は何か明確な予想を述べてはいない。
ただ、投資家に1つアドバイスをしている:
「これがバブルかどうか確実な答を言える人はいないから、うまくいかなかった場合に破滅するリスクに直面することを認識せずにオール・インすることのないようアドバイスしたい。
同時に同じ理由で、オール・アウトしたままで最も重要な将来の技術的進歩の1つを取り逃がすリスクも冒すべきでない。
選別と思慮のある半身のポジションが最良のアプローチとなろう。」
オークツリーとその親会社も一部、十分な検討の下でAI関連分野への投資に従事しているという。
なお、マークス氏は「補遺」の中でAIがもたらす社会にとっての(恩恵でなく)潜在的弊害についても言及している:
雇用が失われないか。
結果、需要が低下し、経済成長の下押しとならないか。
また、マークス氏は、AIが大きな生産性上昇をもたらす場合、政府がユニバーサル・ベーシック・インカムを導入するのではないかと予想している。
ただし、その場合でも財源の問題や、労働による生きがいの問題は残るだろうという。
さらに資本家らしい心配も明かしている:
「最後に、海岸沿いに住む少数の高学歴の億万長者が何百万もの雇用を奪うテクノロジーを作ったと言われるようになるのを心配している。
これは現状よりも大きな社会的・政治的分断をもたらし、ポピュリストによるデマゴーグの土壌となるだろう。」
億万長者とはこういう気持ちでいるのだろうか。
そう思えば、生活に困らないだけの小金持ちというのも心地のよい着地点なのかもしれない。
