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ジム・チャノスが指摘した、とある時代のデジャブ

ショートセラー ジム・チャノス氏が、6日発表のAMDとOpenAIの提携について苦言を呈している。


もしもAMDが(OpenAIに)数百億ドルもの価値のあるワラントを付与するなら、この取引は『AMDに数百億ドルの収入』以上をもたらすのだろうか?

チャノス氏が、AMDとOpenAIの業務・資本提携に対する疑問をツイートした。

AMDとOpenAIは6日、AIインフラ構築のための提携関係を発表した。
OpenAIは複数年かけてAMD製GPU(計6GW規模)を導入する。
これとともにAMDはOpenAIに対し最大160百万株分のAMD株のワラントを付与する。
このニュースを受け、同日のAMD株は24%上昇した。

ワラント付与にはGPU導入の進捗、AMD株価、OpenAIの技術・商業的進捗の条件が付いている。
AMDの発行済み株式総数は1,622百万株だから、ワラントが対象とする株数はその1割弱にあたる。
発表前のAMD時価総額は約2,700億ドル。

チャノス氏が言いたいのは、これが真正売買なのかという点だ。
GPUの売り手であるAMDが買い手のOpenAIにAMD株のワラントを付与し、それに高い価値があるのなら、AMDはこの売上に対し代金を受け取ったと言えるのだろうか、との疑問である。

この疑問は、発表された提携が奏功し両社が繁栄した時に最も先鋭化する性質を持っている。
条件とされたGPU導入が進捗し、AMD株価が上がり、OpenAIの技術・商業的進捗も実現するためだ。
繁栄はすばらしいが、そこに至った業績の一部が張りぼてだったことになる。

ITバブルの記憶のある人ならこの話題には大いに既視感があるはずだ。
ベンダー・ファイナンスなどといった言葉が流行り、当時はとにかくお金を払わない時代だった。
新興企業は買物や労働の対価として現金でなくオプションやワラントで支払った。
その多くが熱狂の消滅とともに跡形もなく消えていった。
もちろん、消えてなくなるだけなら(売り手は代金を取り損ねるものの)たいした問題ではないのかもしれない。
しかし、発表時に株価が大きく上昇するのなら、そこには巻き戻しのリスクが内在していると考えるべきなのだろう。


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