ジェレミー・シーゲル教授は、米国債のヘッジ手段としての有効性を振り返っている。
「長期債は今回のインフレが起こるまで40年間にわたりすばらしいヘッジだった。
最良のヘッジだった。
長期債のベータは2010-20年の間、史上最大のマイナスの値を示した。
だからこそ(長期債)利回りは1%まで行った。
突然インフレが襲うと、実質金利が上昇し、突如としてベータはプラスとなり、株式と債券の両方がやられた。
突然ヘッジでなくなり、突然みんな高い利回りを要求しだし、低利回りが享受できなくなった。」
ベータがマイナスとは、株式と債券の相関がマイナスと考えればよい。
ベータがマイナスの時期、株式が下落すれば債券が上昇していた。
よいヘッジだった。
それが今反転したように見える。
シーゲル教授は、債券利回りが株価を動かすのではなく、株価が債券利回りを動かしているのではと考えている。
長期債の要因にはインフレとか実質成長とかがあるのだが、長期債変動の多くは長期債がどれだけヘッジとして有効かという認識にあると言っているのだ。・・・
長期債が動いているのに株式市場がそれにつれて動かないのはそれが原因だ。・・・
みんな長期債が合理的な予見だと研究で示しているが、そうならば短期金利の変動でこんなに動くものだろうか?
この議論の一端を抽象化して表現すると、相関関係がすなわち因果関係を示すものとは限らないというもの。
市場予想者の多くは株式と債券の相関がプラスの時、例えば《今後長期金利が上昇(価格は下落)すると予想されるので、株価にマイナスの要因になろう》などと言う。
債券(金利)が株式を動かすという因果関係が暗示されている。
しかし、シーゲル教授が言うように因果関係が逆ならば必ずしも《株価にマイナスの要因》にはならないことになる。
実際、株式と債券の間の相関関係は相当に移ろいやすい。
これは近時の現象をよく捉えた考え方のように見える。
その一方で《永遠のブル》であるためにあまりにも都合のよい見方のようにも見える。