ケン・フィッシャー氏がインフレについてマネタリスト的解説を行っている。
つくづく言葉の定義の重要さを思い知らされる。
私が若い頃ミルトン・フリードマンが言ったとおり、インフレとは常にどこでも貨幣的現象だ。
インフレとは、貨幣の購買力の希釈化によって起こる。
経済が生み出すことのできる新たな財やサービスの金額より多く中央銀行が貨幣を増発することによる希釈化だ。
フィッシャー氏が自社のYouTubeチャンネルで、インフレの原因について解説している。
コテコテのマネタリストとしての考え方であり、インフレの本来の定義に沿ったものだ。
インフレ(Inflation)の原義は《膨張》であり、ここでは貨幣の膨張を指している。
その点で、フィッシャー氏の解説は原義通りのものと言える。
フィッシャー氏はこの考え方から見て、世間に多くの誤った考え方が流布していると嘆いている。
私は関税が好きではないが、関税はインフレを引き起こさない。・・・
関税が課された時にインフレが起こることはありうるが、それは貨幣量が増えたことによるものだ。・・・
原因は貨幣の作用であって関税の作用ではない。
関税はそれ自体マネーサプライの増減と直接には関係しない。
むしろ課税であることから経済を冷やし、マネーサプライを低下させるかもしれない。
つまり、フィッシャー流定義に従えば、関税はインフレ的というよりデフレ的と言えるのだ。
世間一般でインフレという言葉が使われた場合、それを貨幣膨張の意味で使うことはまずない。
ほとんどすべての場合、それは物価上昇を意で用いられている。
貨幣膨張が貨幣の購買力を希釈し、その結果物価が上昇する要因となるためだ。
だから、インフレを物価上昇という意味で定義して使うなら、関税は一時的ではあるがインフレの要因となる。
(引き上げ時に一時的にインフレ(物価上昇)を引き起こし、その後デフレ(物価下落)的影響を及ぼす。)
これは単なる言葉の定義の問題だ。
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