ローレンス・サマーズ元財務長官が、12月1日付でFRBが予定する量的引き締めの停止についてコメントしている。
量的引き締めは、量的緩和のために買い入れた資産を徐々に(多くは償還を待って)減らし、膨張した中央銀行のバランスシートの正常化を図るもので、金融を引き締める方向に働くといわれる。
最近では、金融市場の不測の混乱を避ける目的で量的引き締め停止が近いと予想されてきており、先月のFOMCで予想どおり停止されると発表された。
サマーズ氏は、量的引き締めの停止について、そう重要視はしていない。
「超過準備に付利している今の時代、適正なFRBバランスシートの大きさは特段重要な変数だとは思わない。
以前、バランスシートの反対側が付利のないお金だった時代、マネタリズムの時代ならば、FRBバランスシートの大きさについて騒ぐのもありえたが、今はその大きさについて精緻に心配するほどの変数ではないと思う。」
リーマン危機への対応として量的緩和が始まるまで、FRBは市中銀行から預かった準備預金に対し利息を払っていなかった。
量的緩和まではそもそも準備預金の規模自体が小さかった。
量的緩和を開始し準備預金が急増すると、潤沢な資金により市中金利が政策金利の誘導目標下限より低く下がるのを防ぐため、超過準備への付利が始まった。
仮に現在、付利まで停止すれば大事だ。
FRBは資産からのリターンを受け取り続ける一方で、市中銀行への利払いがなくなり、大いに潤う。
(財政の観点からこれを主張する政治家もいる。)
しかし、市中銀行に莫大な機会損失を押し付けることになるから、そうそう通る話ではない。
市中銀行は急激に準備預金を減らし、大量の資金が市中に解放され、経済・市場が流動性の波に飲まれてしまうだろう。
つまり、政策金利による金融操作ができなくなる。
現在まだFRBは付利を続けている。
FRBは資産側からリターンを受け取り、調達側の超過準備に利息を払っている。
ざっくり言って、右から左に金利を中継しているようなものだ。
この資産・負債額を縮小したからといって経済・市場にとっては大きな話ではないというのがサマーズ氏の意見だろう。
(次ページ: 心配なのは経済・市場ではなく政府・中央銀行への影響)
