ジェレミー・シーゲル教授が、かねてから心配してきた米財政問題についてAIによる生産性上昇への期待を述べた。
基本的には(関税収入は)経済成長と打ち消し合う関係だ。
今後財政赤字がどうなるか注視しないといけない。・・・
立法に加えて、AIが財政赤字を減らしてくれることを願っている。
シーゲル教授がCNBCで、トランプ関税の騒動の前まで主たるリスクに挙げてきた米財政問題についてコメントした。
米下院は22日、トランプ大統領が「one big beautiful bill」と呼ぶ税制・歳出法案を可決した。
215票対214票と僅差での可決だった。
2017年のトランプ減税の延長のほか、4兆ドルの債務上限引き上げ等が織り込まれている。
議会予算局は、この法案がそのまま実行されれば2026–34年で連邦財政赤字が約3.8兆ドル増えると推計している。
28日、政府効率化省DOGEで歳出削減策を進めてきたイーロン・マスク氏が政府役職を退任した。
同氏はCBSのインタビューに対し「膨大な歳出法案を見てがっかりした。財政赤字を減らすのではなく増やすもので、DOGEのチームがやっていることを無駄にするものだ」と話した。
市場は法案可決前に長期金利と金価格を上昇させ、長期金利こそ落ち着きつつ見えるが、金価格は高位にとどまっている。
シーゲル教授は、想定される関税収入が関税率引き下げによって減った点については重視していない。
関税率が高ければ関税収入こそ増えるが、経済成長を阻害し、その他の税収が減る。
逆もまた然り。
そもそも、関税収入は長期的な財政赤字に大きな影響を与えないとの見方が一般的と説明している。
シーゲル教授は、トランプ関税がすべての市場トピックを覆い隠す前、米市場にとっての重大なリスク要因として財政赤字とそれによる長期金利上昇の可能性を挙げていた。
関税収入が主たる助けにならないことは分かっていた。
教授は、財政再建に経済成長が必須である点を指摘している。
《永遠のブル》に戻ったシーゲル教授は、何を材料に米財政への心配を軽くしたのか。
それは、市場が期待するのと同じAIなのだ。
(AIには)需要があり、それは単なる需要ではなく見込み(promise)だ。
これがとても重要なのは、AIが将来の米経済の生産性を促進し財政赤字を和らげる可能性があるからだ。
シーゲル教授は先日の出演で、仮にAIが生産性を3%上昇させるなら3%の実質成長が財政赤字も消化できると発言している。
財政問題はともかく市場への影響については、意図せずして利益成長も長期金利安定もいずれもAI次第の論理になっているように聞こえる。
強気とは恐ろしい。
せめてダブル・ジョパディ(二重の危険)とならないことを祈ろう。