ジェレミー・シーゲル教授が、米国株市場への強気スタンスに回帰した。
かつてのように物事の明るい側を強調するレトリックが戻っている。
私は強気になりつつある。・・・
市場が最高値を付けてみんなを驚かす可能性もある。
シーゲル教授がCNBCで、米市場が最高値を更新する可能性に言及した。
このところ慎重だった教授のトーンの変化にキャスターも驚きを隠さなかった。
シーゲル教授を強気にさせたのは、言うまでもなく関税に対するトランプ大統領の軟化だ。
米中間で、それまで禁輸に等しかった高い関税率を90日間大幅に引き下げた点が大きい。
関税率の着地について、現状の教授の予想は
原則:10%
中国、アルミ、鉄鋼等:30%
だという。
教授はもちろんこの税率でも「よいことではない。プラスではない」と話し、関税がなければ株価はあと10%高いところにあったと話した。
ただし、ひどく高いところからの軟化は最悪の状況と比べ相対的にプラスであるのも事実だ。
シーゲル教授はインフレ低下、大統領の中東訪問、市場が悪いニュースに反応しやすいことも挙げ、代名詞でもある強気を取り戻したようだ。
シーゲル教授は16日にミシガン大学が発表した消費者マインド調査における1年先インフレ期待7.3%についてもコメントしている。
この数字はアンケートの回答を集計したもので経済モデルによるものではないと指摘した上で、自身の関税による押し上げ幅の予想は12-18か月で1.5-2%だと話した。
(基調的なインフレ率を2-3%と見ても、出来上がりで3.5-5%と低い。
もっとも、消費者にとってはかなり高いというべきだが・・・)
教授は、今後実績データが7.3%を大きく下回るにつれ、ポジティブ・サプライズになりうると話している。
興味深いのは、シーゲル教授の予想の低さだ。
関税率について10-30%の引き上げを予想するのに、教授の「経済モデル」がはじき出す押し上げ効果はわずか1.5-2%。
多くの財を輸入に頼り、価格転嫁・便乗値上げが日常茶飯事で、国内回帰にともなう設備投資需要増が予想される米経済で、本当にこの程度のインフレ率に収まるのか、注視すべきポイントだろう。
また、出来上がりのインフレ率が高い場合に、関税が供給ショックだからといって、FRBがそれを無視して利下げできるかも不透明だ。
(もっとも、関税率の方がさらに下がる可能性は残っているだろう。)
シーゲル教授は強気に転じた理由についてもう1つ、ドル安を挙げている。
外国での利益の換算の他、外国投資家にとっての米株価がドル安分低く見えることを指摘している。
その分、利益も低く見えている点には言及していない。
さて、この《永遠のブル》復活は長続きするだろうか。