アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が市場の挙動について達観を述べている。
実相を冷静に把握する上で役に立つのではないか。
《バリュエーション学長》の異名をとる教授はCNBCで、米国株市場のバリュエーションが「ばかげた」領域に達したかとの問いに答えた:
「過去10年間、同じ会話を繰り返している。・・・
私は過去3-4年この点に関し市場の方が専門家より信頼できると考えてきた。」
市場とはバリュエーションや株価評価などの理屈通りに動くものではない。
特に米市場は、ほとんどの時期が上げ相場であり、時より急激な下げがやってくる。
だから、多くの場合、上げを予想すればかなりの確率で当たるわけだが、それだけに上げ予想には大した価値がない。
それと同様、時期を言い当てることのできない下げ予想にも価値がない。
米市場について価値のある予想とは、時期まで的中する下げ予想だが(極めて稀で極端な局面を除いて)それがほとんど不可能であることは多くの人が認めるところだ。
ダモダラン教授は、市場が理屈通り動かないことを知り尽くしている。
同様に、マグニフィセント7等が牽引する構図が「長く続く物語」であり、すぐには終わらないと考えている。
「市場が高いかと言えば、全くそうだし、近づいているであろうリスクを過小評価しているかと言えば、おそらくそうだ。
でも、そうしたリスクが経済や企業利益の数字に表れてくるにせよ、そうなるまでは市場は『何が起こるかはわからないから、うまく行くという期待に基づいて値付けしよう』と言うのだろう。」
ダモダラン教授の言葉は、米市場の楽観癖をよく言い表している。
教授は、22日のジャクソンホール会議でのジェローム・パウエルFRB議長講演に対する市場の反応(株高・金利低下)についても、市場が過剰反応していると話す。
ダモダラン教授は、FRB利下げが必ずしも株高要因になるとは限らない理由を説明している。
「FRBはFF金利に影響を及ぼすことはできるが、米国債利回りは独自に変化するものだ。」
ダモダラン教授は、FRBが利下げしても、長期金利が4%を切るとは限らないという。
インフレが2.5-2.7%に留まる限りは、長期金利は4%超に留まるだろうという。
教授は、仮に利下げしても長期金利が下がらない場合、米国株市場が上げの一部を打ち消す要因になるとした。
ディスインフレの時代とは異なり、この傾向は昨年も見られた現象だ。
昨年も秋にFRBが利下げに転じた後、長期金利はむしろ上昇する局面があった。
ダモダラン教授はパウエル議長の講演について、ハト派的であったというよりは、タカ派的でなかっただけと解釈している。
「いろんな点で、市場はこのプロセスについて読みたいように読んでいる。
市場の気持ちは、FRBへの利下げ圧力が強く、たとえ正しくなくてもFRBが利下げするというもの。
中央銀行として行うべきことではないだろうが、それが今の状況だ。」