モハメド・エラリアン氏は、リスクオン資産(株式、クレジット等)とリスクオフ資産(金、米国債)の両方が上昇していると指摘する。
リスクオン資産だけに目を奪われてはいけない。
どうしてリスクオフ資産も良いのか、自問しないといけない。
米国のリスクオン資産は史上最高値圏にある。
リスクオフ資産のうち金も史上最高値圏にあるが、これについては主因をインフレ懸念とする議論もありえよう。
注目すべきは、このところ買われている米国債、とりわけ長期債である。
インフレに弱いはずのこのリスクオフ資産まで買われているという事実は、米市場が楽観の一枚岩ではないことを示している。
エラリアン氏は、消費者の負債側(クレジットカード、自動車ローン)に黄信号が灯っていると話す。
一方の資産側では、これまでコロナ後の財政出動の恩恵で現金が潤沢だったものの、今後、低所得者層の側から現金が枯渇するだろうという。
その上で、この現象がより高い所得の層まで及ぶかが問題であり、それが「非線形」な現象の理由だという。
エラリアン氏は、今月のFOMCで50 bpの利下げが真剣に検討されるべきとし、さらに金融政策だけでは対処できないと話す。
AI・ライフサイエンス・ロボティックスなどを用いた生産性上昇を促すための規制緩和が必要と主張している。
マクロ経済的には実にまっとうな主張だし、そうした政策が経済成長・株式市場にプラスになるのは明らかだ。
その一方で、雇用が悪化する中での生産性上昇の議論は、結局のところ生身の人間だけが取り残される結果にならないか疑問も残る。
エラリアン氏は従前から《包摂的な成長》の重要性を主張しているが、金融政策と規制緩和では必ずしもそうした道筋が見えてこないのが心配だ。