オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏がカタール経済フォーラムで21日クウェート投資庁トップとともに登壇した様子をBloombergが伝えている。
わずか25分のセッションで4つの箴言を引用しているので紹介しよう。
世界最古のソブリンウェルスファンドのトップは冒頭「ノイズを無視しろ」と話し「リスク管理の失敗に根差すチャンスを探している」と語った。
不確実性の高い投資環境での投資先発掘のチャンスを示したものだ。
話題はマークス氏お得意のリスクの話となった。
同氏は多くの引き出しから、4つほど名句を引用している。
(『』内がそれぞれの引用、『』外がマークス氏の発言部分。)
1つ目はロンドン・ビジネススクールのエルロイ・ディムソン教授からの引用:
『リスクとは、これから起こることより多くのことが起こりうることを意味する。』
これは、リスクが発現する複数の可能性があることから来るもので、私たちはそれを認識しないといけない。
誰も将来を予想できないという、投資やリスク管理の基本を強調した発言だった。
2つ目はジョン・ケネス・ガルブレイスの言葉:
『この世界には2種類の予想者がいる。
1つ目の種類は、モノを知らない人。
そしてもう1つの種類は、自分がモノを知らないことを知らない人だ。』
自分がどちらかを知ることはとても重要だ。
マークス氏は、投資において最悪なのが、知らないままにリスクを取ることだと話している。
3つ目はジョン・メイナード・ケインズの言葉:
『投機家とは、自覚のあるリスクを取る人たちだ。
投資家とは、自覚していないリスクを取る人たちだ。』
私たちは知りつつやりたいし、逃げはしない。
長期的に見て、私たちが取るリスク量が許容可能であると強調し、・・・割安であることを願っている。
ケインズの言葉は、投機家を褒めすぎのように聞こえる。
マークス氏のコメントは、双方のいいとこどりを目指しているという趣旨だろう。
最後はいつものマーク・トウェインの言葉:
『歴史は繰り返さないが韻を踏む。』
サイクルごとに韻を踏むテーマの1つは、物事がうまく行っている時にみんなリスクを過小評価し、自分が流動性なしでも生きられるとの能力を過信することだ。
状況が悪くなると、ああ、なんでみんなが流動性に対して余分にお金を払うのか理解した、と言うんだ。
これは、クウェート投資庁トップの懸念に関連してコメントしたもの。
プライベートエクイティ・ファンドの流動性の低さへの懸念だった。
マークス氏のコメントは、より幅広い市場参加者に対して流動性の重要さを説いたもの。
ちなみにオークツリーはプライベートクレジット市場がブームを迎えた時も慎重なスタンスを取っていた。
話題がリスクの話だったので少々心配な話ばかりになった。
決して、マークス氏が市場環境についてネガティブなスタンスを取っているわけではない。
同氏は米国例外主義について次のように話している。
「米国は世界の中で最良の投資先だ。
問題は、かつてと同じように今も最良なのかだ。・・・
大きな世界志向のファンドが米国を大きく減らすとは想像できない。
他に移さなければいけなくなるが、どこにもっとよいところがあるのか。」