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【データ】金利の動向(2)日本の金利

財務省が国債の借り換えに苦心している。

国の思惑は?

長期・超長期ゾーンへの投資家の食欲が減退しているため、超長期債の発行を減らすなどで対処している。
ならば、超長期の物価連動債も検討してもいいのではないか。

国債市場特別参加者会合の話などを読んでも、そうそう簡単な話ではないのがわかる。
ただ、市場ウォッチャーからすれば、10年を超える物価連動債の銘柄があってほしいとも思うのだ。
しかし、それも市場の需要・流動性あってのことなのだが。

債務者たる政府にとって物価連動債での資金調達とはどのようなものだろう。
もちろん、多様な調達手段を持つことには常に意味がある。
しかし、それ以外では果たして魅力的だろうか。

財務省が苦心しているように、政府の資金繰りは決して安泰とは言えない。
その一方で、政治や世論を見る限り、通常の意味での財政再建策を進めるにも限界がある。
結局、財政再建の少なからぬ部分をインフレに頼らざるをえないのかもしれない。
その場合、物価連動債による調達ではまずい。
物価連動債での調達では、インフレによる債務負担軽減が実現しない。

結局、政府は物価連動債をどんどん増やそうなどとはしないのではないか。

物価連動債は金利上昇のヘッジにはならない

最後にもう1つ注意すべきは、物価連動債はインフレヘッジにはなるが、金利上昇へのヘッジにはならない点だ。
今後のさらなる金利上昇を懸念する場合、その金利上昇の理由がインフレだけならば、物価連動債でもヘッジできるのだろう。
しかし、金利上昇の要因に実質金利の上昇がある場合、その部分はヘッジされない。
実質金利が上昇するとは

  • 経済が上向く
  • 金融緩和を解消する・金融引き締めが実施される

のいずれか、または、両方の場合に起こる。
こうした場合、物価連動債は実質金利上昇部分をヘッジし損ねてしまう。

さらに心配するなら、物価連動債でヘッジできるのはCPIというインフレだ。
CPIが上昇する時期、資産インフレはCPIの上昇を超えてくることも多い。
そういう場合、CPIをヘッジできても、他の多くの資産クラスに対してはアンダーパフォームするかもしれない。

まとめると、読者が緻密にポートフォリオの分散を実施しているなら、物価連動債は強力なパーツになるだろう。
しかし、物価連動債の実質利回り自体はまだ低く、それだけを見れば魅力があるとは言い難い。
(米国なら実質2%だが、日本では実質ゼロ近傍。)
かつ、実質金利上昇のヘッジにはならない。
こうした実相を理解した上で検討すべき商品だろう。


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