さらに、物価連動債はインフレだけをヘッジしており、実質金利の上下をヘッジするものではない。
よって、実質金利が
- 上昇すれば物価連動債価格は下落
- 低下すれば物価連動債価格は上昇
することになる。
前者の場合も期限償還まで待てば同じと考える人もいるのだが、それは、実勢の実質金利より低い実質利回りで我慢することを意味する。
実質金利が上昇するケースとしては、例えば
- 実質成長率の上振れで資金需要が高まる
- 経済状況(成長率、インフレ等)と関係なく利上げが行われる
- 危機などにより金融市場が自ら引き締まる
などが想定できよう。
世間には、ヘッジすることを善と考える人がいるが、それは間違い。
ヘッジにはコストや裏目が存在する。
例えば、ガソリン価格高騰を恐れて大量に先買い(つまりヘッジ)した場合、
- さらに上昇するならヘッジが有利
- 逆に低下するならヘッジが不利
となる。
仮にあなたがガソリンスタンドを営むなら、先買いして価格下落となれば、割高な在庫を抱えて困ったことになる。
仮にあなたが銀行で、金利上昇を恐れて、先の分まで資金調達をすると、逆に金利が下がった場合、貸出の利ザヤが減り、場合によっては逆ザヤにさえなりかねない。
ヘッジとは諸刃の剣であり、何でも全部ヘッジするのは得策でないことが多い。
唯一得策となりうるのは、もはや損得は考えない場合だ。
将来のインフレ高騰が心配で夜も眠れない場合、物価連動債を買って、結果、名目債より損をしても構わないと覚悟を決めるのなら、メリットがある。
損得を忘れられるなら、夜ぐっすり眠れるはずだ。
というのは少々持ち上げ過ぎかもしれない。
仮にインフレ上昇をヘッジできたとしても、ヘッジで補償されたはずの一部は残酷な最終兵器で食い取られてしまう。
詳しくは「【小噺】堅実な3兄弟」を読むとよい。
山田 泰史 横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。
