アリアンツ主席経済顧問モハメド・エラリアン氏が、このところ日本の金融政策・金利に注目した発言を続けている。
「先週述べた理由で、日本についてこの特殊な動き、国債利回りの継続的急騰に注目することが重要だが、10年債は今や2.07%の利回りで売買されている。」
エラリアン氏が22日ツイートした。
日本の長期金利上昇が止まらない。
19日に日銀が利上げしたにも関わらず、円相場も円高方向に戻る様子が見られない。
その様子が注目を浴びている。
エラリアン氏のツイートで興味をそそられるのは「先週述べた理由」がどういう理由かだろう。
実は同氏は、19日の利上げ直前から日本に注目していた。
利上げ発表直前のツイートでは、日本の11月のCPIを紹介し、利上げが「決まり」と予想している。
発表直後のツイートでは、政策金利が1995年以来の水準まで引き上げられた述べた上で、逆に「ややハト派的な記者会見が市場を驚かせ、円がドルに対し1%下げるのにつながった」と市場が円安で反応した理由を解説している。
さて、冒頭の「先週述べた理由」についてはもう1つの19日のツイートに書かれている:
日本の2%のしきい値: 利回り上昇が世界中の市場で波紋を増やしている。
10年もの日本国債(JGB)利回りが2%に達し、その動きが先進世界中の利回りを押し上げている。
「2%のしきい値」という言葉には、2%を超えたら何かが起こるという含意だろう。
エラリアン氏の第一の興味は日本の経済・市場というより、やはり米国その他の市場にあるようだ。
これまで低コスト資金を世界に供給してきた日本の利上げが世界市場に影響することを心配しているのだ。
利上げしたとは言え、未だに政策金利は0.75%。
足下のインフレ率3%よりはるかに低く、したがって短期の実質金利は大きなマイナス圏にある。
日本の利上げが限界的に国外にも影響するのは当然だろうが、騒ぐほどの変化だろうかとの疑問も湧くだろう。
実際、利上げ後に長期金利が2%を超えても円安が巻き戻る気配が見えないから、今のところ潮目に変化は見られない。
仮にいわゆる円キャリーが巻き戻るようなら、それは海外の経済・市場には(昨年8月ほどではないにせよ)ショックが走るのだろうが、そうはなっていない。
潮目が変わっていないことは海外にとっては朗報だろうが、日本にとっては凶報だろう。
エラリアン氏は先述のツイートで日本の置かれた状況にも触れている:
「利回り上昇は2つの面から圧力を強めている:
予算: 日本の大きな公的債務のコスト増加。
金融機関のバランスシート: レガシーである低利回り債券を保有する金融機関の耐性の試金石。
こうした逆風にもかかわらず、政府と金融機関はこれまで安定的に『新たな利回りパラダイム』を乗り切ってきた。
2026年についての疑問とは、インフレが粘着的であり続ける中で『秩序』が失われていくか否かにある。」
「秩序」とはおそらく金利や為替を意図したものだろう。
この「秩序」が失われるとは、金利上昇や円安にブレーキが効かなくなるということだろう。
この問いに対し、エラリアン氏は確たる答を持っていないというわけだ。
ちなみにエラリアン氏は別のツイートで、2025・2026年の世界経済を表す言葉として「2025年は耐性、2026年はばらつき」を挙げている。
今年の世界経済は全体として底堅く推移したが、来年は国によって差が広がるといいたいのだろう。
