ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏が、今後数年の経済・市場について厳しい見通しを語っている。
債務に対処するには2つの方法がある。
ハードマネーで返済するか、ソフトマネーで返済するかだ。
ハードマネーで返せば、問題、不況を引き起こす。
だから、歴史を通して、ハードマネーでの返済は最終的に放棄され、貨幣増発が行われた。
ダリオ氏がYahoo Financeで、債務が急増した各国の財政再建の解について尋ねられた。
同氏はハードマネー/ソフトマネーの明確な定義を示していないが、文脈からして
- ハードマネー: 価値のある貨幣で通常の意味で返済する。
- ソフトマネー: 貨幣増発で返済にあて、それがゆえに貨幣の価値が低下し、さらに借金の価値が下がる。
という意味なのだろう。
要は、政府はいつも安きに流れ、貨幣を増発し、貨幣の価値を貶めてしまうということだ。
ダリオ氏はその例として1971年のニクソン・ショック、1933年のルーズベルトの金本位制離脱を挙げている。
ダリオ氏は上記2つのイベントについて常々紹介してきた。
いずれも貨幣増発の宣言ともいうべきもので、ドル下落、株価急騰、金急騰を引き起こしている。
ドルと株と金と並べて考えれば、要はドルが下がったわけだ。
ダリオ氏はいつものように「現金はゴミ」というパワーワードを挟みつつ、投資への含意を語る。
「お金の価値について考えないといけない。
どれだけ債務性商品に投資していて、それを保有したいのか?
私は悪い資産だと思う。
分散しないといけない。」
ダリオ氏は米経済の先行きについてあまり明るい見通しを持っていないようだ。
とりわけFRBについては政策が行き詰まる可能性が高いと見ている。
FRBがインフレに適切に対処するために必要な引き締めは、市場や経済にとって過度な引き締めになる。
FRBは今後1年極めて困難な時を迎える。
インフレは高止まり、市場と経済の両方を阻害することになる。
この読みが正しいなら、今後の米経済は次の2つの間のどこかということになる。
- インフレは退治するが、経済は不況に、市場は弱気相場に陥る。
- 経済・市場を大きく悪化させないものの、不快なインフレが継続する。
おそらくこの間がスタグフレーションということなのだろう。
キャスターは、ソフトランディングはないのか、そうする方法はないのか、と尋ねている。
ダリオ氏は答え方に迷いながら、最後に正直に答えている。
一番ありそうなのはスタグフレーションの時代を迎えることだ。
そうした環境に合わせてポートフォリオをバランスしないといけない。
ダリオ氏は、最近市場を賑わせているイールドカーブの長短逆転についても尋ねられている。
同氏によれば、イールドカーブも重要だが他にも注目すべき利回り間のスプレッドも多いのだという。
例えば、現金-債券、債券-株式、企業内(借入-利益)だ。