そんな中で日銀はなんとか金融政策を正常化させようと努力を続けている。
国債の需給均衡を日銀の国債買い入れでなく、金利上昇で実現しようという転換点であるようにも見える。
5月22日の物価連動債(第30回)の入札では、募入最高利回りが0.000%になった。
これまで日本の実質長期金利はマイナス圏に沈んでいたが、水面上に浮上する可能性が見えてきた。
これは、仮に債券市場が予想するブレークイーブン・インフレ率が今後のインフレ率の合理的な予想であるとするならば、長期債に投資してもインフレに負けないと期待されるということだ。
大きなプラスの実質利回りこそまだ得られないものの、投資の価値が保存されると期待できるということだ。
これに反応するように、世界の債券投資家が日本国債を再び投資の選択肢に戻しつつある。
しかし、こうした変化も喜ぶべきかどうかはわからない。
少なくともダリオ氏は決して楽観していない。
債務問題・財政問題の軌道を変えない場合、次のステージに進むことになるという。
この大きな債務サイクルの終盤では、この力学が次のような市場行動として表れる:
長期金利主導で金利が上昇する。
通貨が特に金に対して下落する。
長期国債の需要不足から財務省が債務発行の償還期限を短期化する。
これらの現象は、まさに近年日米で観察されてきたことだ。
ダリオ氏は次の展開も解説している。
典型的にはプロセス終期にこの力学が最も過酷になると、次のような極端な手段が多く実施されることになる:
資本規制を課す。
債権者に対し、売らずに買えとの異例の圧力を加える。
日米でも、自由に自国通貨や国債を売却できない時代が来るのかもしれないのだ。
以前、中国や新興国の一部で見られたように、減価していく現預金・債券を持たざるをえない時代になるのだろうか。
ダリオ氏の投稿ではQ&Aも載せている。
その中から3つを紹介しよう。
Q4: 何が米債務危機のカタリストになるか:
ダリオ氏は、具体的なイベントこそ予見していないが、米財政再建が進まないと予想し、その場合は3年以内に危機が到来すると言う。
Q8: 米国以外で注意すべき国は:
ダリオ氏は、英国・EU・中国・日本などほとんどの国で債務と財政赤字の問題があると指摘する。
このため金やビットコインなど政府によらないお金がよいパフォーマンスを上げるだろうと言う。
Q9: 投資家はどう行動すべきか:
強いI/S・B/Sを持ち国内対立や国際的・地政学的対立の大きくない資産クラスや国でよく分散する。
債券のような債務性資産をアンダーウェイト。
金と少しだけビットコインをオーバーウェイト。
資産の小さなパーセンテージだけでも金を持てば、ポートフォリオのリスクを低減でき、さらにリターンを向上させるだろう。