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アスワス・ダモダラン 自国通貨建て政府債務のデフォルトが増えている:アスワス・ダモダラン

原則論を言うなら、自国通貨建て国債であってもデフォルトしうるのだ。
だから、理屈に従って行動・計算をする場合《デフォルトしない》とするのは誤りだ。
デフォルトという究極の状況について予見するのは難しいが、たとえ先進国であっても、もしかしたらデフォルトよりインフレの方が大きな脅威とされる状況がありうるかもしれない。
そのような時にインフレとデフォルトの二者択一を迫られた場合、デフォルトを選択することもありえるのだろう。


もっとも、何事も程度の問題だ。
こうした二者択一でインフレが選択されることが多いのは言うまでもない。
上記データベースの2023年予想の数字ではデフォルト92か国中、自国通貨建てが5か国、金額では5,235億ドル中で266億ドルと少ない。
また、カナダ銀行によると「これらデフォルトの大多数は速やかに解決される傾向がある」という。
国内債務は整理しやすい。
つまり、投資家の損失が速やかに確定する傾向があるということだろう。

一方で、215か国中4割以上がデフォルトしている現実を見ると、デフォルトがいかに一般的な出来事であるか思い知らされる。
上述の《デフォルトという究極の状況》という表現は撤回しないといけない。
ちなみに2023年予想で先進国のデフォルトはゼロだが、欧州債務危機の続いた2012年では全体の金額の6割超が先進国だった。

軽々に《自国通貨建ての政府債務はデフォルトしない》とは言わない方がよさそうだ。
言ったところで、それは表面的な話に過ぎない。
仮に政府の金融債務がデフォルトされない場合でも、増税・社会保険料増・社会保障削減・公共サービス削減などは、政府による約束(法律・政省令・規則・公約)のデフォルト(債務不履行)と言わざるをえない。
さらに、金融債務に限定する場合でも、デフォルトはせずとも通貨の価値が通貨安やインフレで減価するなら、債権者に及ぶ実質的な効果はデフォルトと何も変わらない。
ちなみに、債券格付の基本的考え方は、通貨安やインフレによる減価を勘案していない。


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