ジェレミー・シーゲル教授が、あらん限りの好材料を提示し、やや慎重ながらも強気スタンスを復活させている。
関税は正味でマイナスだが、市場のそれ以外の状況はプラスだ。
以前は株式市場が最高値を更新する可能性は極めて小さいと考えていたが、関税が現水準から大きく引き上げられることがない限り(最高値更新も)ありえないことではないと考えている。
シーゲル教授がウィズダムツリーのポッドキャストで、久しぶりに強気スタンスを復活させた。
シーゲル教授のスタンスが大きく強気側に動いている。
(ただし、長期では常に強気を継続している。)
先々週は、関税の悪影響がまだハードデータに反映されていないとして「株式市場の価格は高すぎる」と話していた。
先週は、関税交渉に進展があれば戻しもありうるとしたものの、大きな戻しにはならないとの考えだった。
それが、今週は最高値更新もありうるとなった。
その間の大きなイベントと言えば、言うまでもなく12日の米中合意による90日間の関税率引き下げだろう。
教授は、関税について次のように考えを述べている。
「追加関税が重要な相手国に対して大きく再引き上げされるとは思わない。
・・・それが市場の意見だと思う。
それが間違っているなら、また下落するだろう。
もしも間違っていないなら、市場はそれを消化できると考えるだろう。」
シーゲル教授は今回のポッドキャストで、米市場に対する好材料をとにかくたくさん語っている。
ただ、本人の口調、インタビュワーの質問にもいくぶん表れていたとおり、変心を裏付ける説得力があったとは言い難い。
特に、以前から教授が心配してきた、関税の悪影響顕在化については、まだ結果が出たとは言い難い。
他にも、米長期金利に対する懸念について尋ねられると、シーゲル教授は、ドル安が米国債の需要増の要因になるとも話している。
だが、皮肉にも時を同じくしてムーディーズは米国債の格付けを最上位のAaaからAa1に1段階引き下げている。
教授の以前の心配はまだ生きているとも受け取れる。
もっとも、この変心を責めるわけにはいかない。
米市場の状況が先週よりはるかに改善したのは間違いなく、スタンスを上方修正するのは理に適っている。
デジタルには言い難いところで、下り坂が上り坂に移行したのだろう。
そもそも米市場は圧倒的に上り坂が多い市場なので、現実的な対応とも言える。
今回のトランプ政権は、最悪のところからスタートして、徐々に改善するようなところがある。
シーゲル教授の強気が当たるのか、楽しみにしてもいいのではないか。
いずれにせよ、教授の主たるメッセージは短期トレードではなく、長期投資にある。
今回の強気転換の本当の趣旨は、長期投資のためのエントリーを待つな、ということかもしれない。