ここで、バフェット氏とマンガー氏が提唱した集中投資について、バフェット氏の1993年の書簡で振り返ってみよう。
前世紀にかかれたものであり、まだ両氏のバリュー投資が驚異的なパフォーマンスを上げていた時代の書簡である。
チャーリーと私は昔、投資人生で数百もの賢明な意思決定を下すのは困難だと心に決めた。
・・・このため私たちが採った戦略は、賢明すぎることを求めず、ほんの数回だけ賢明でなければならないというものだった。
実際、現在、年に1つよいアイデアで我慢しようということにしている。
バフェット氏は、自分たちの集中投資が当時(現在も)正統的とされたファイナンス理論の考えに反することを承知している。
正統的とされる考え方を「分散のドグマ」と呼び、経営者や投資家にとっては的外れなアプローチと述べている。
同氏は、学者が「投資『リスク』」をボラティリティと定義しているところを問題視している。
「例えば、ベータに基づく理論では、市場に比して極めて急激に下げた株は・・・高値だった頃より安値である今の方が『リスクが高い』ことになる。」
バフェット氏からすれば、「真の投資家とはボラティリティを歓迎するもの」となる。
市場がボラタイルなら、堅実な企業に不合理な安値が時々付き、買いのチャンスとなるからだ。
同氏は「ベータ至上主義者」(ボラティリティに起因するリスクは分散で低減し、残ったベータ・リスクを重視しようとする考え)を批判する:
- 企業内容どころか企業名さえ見ようとしない。
- 株価履歴を何より重んじる。
- 長期投資でボラティリティは大した意味がない。
一方、バフェット氏が考慮すべきリスクとは
私たちの意見では、投資家が評価すべき真のリスクとは、投資から受け取る税引後の金額(含む売却代金)の総額が、予定保有期間において、当初の購買力に当初持分へのそこそこな金利を加えた額以上になるかどうかである。
バフェット氏によれば、集中投資によって、個々の投資における注力を増やすことができ、許容範囲を狭めることにより下方リスクを小さくできるという。
そのために評価すべき主要素を5つ挙げている:
1) 長期的・経済的特徴
2) 事業・キャッシュフローを有効に用いる経営力
3) 適切に株主還元を行うか
4) 購入の価格
5) グロスリターンから差し引かれてしまう税金・インフレの水準
この問題は、集中か分散かの問題であり、同時に、個別銘柄か資産クラスか、アクティブかパッシブかの問題だ。
上手なアクティブ投資家は集中した方がよいということだろう。
実際、バフェット氏も、標準的な投資家にはインデックス投資をしばしば推奨してきた。
問題は、私たちがどの道を選ぶかだ。
バークシャーをして今世紀のパフォーマンスは必ずしも輝いたものとは言えなくなっている。
会社自らが普通の会社に変化しようとしている。
私たちのほとんどはそれでも、バフェット氏やバークシャーほど優れた投資家・組織ではあるまい。
かと言って、ほとんどすべての投資家がインデックス投資家になることほど危ういこともない。
正統的ファイナンス理論が抱えるこの矛盾がどう消化されていくか、実は多くの投資家の将来に大きく影響するのかもしれない。