本サイトで意外と人気の高い、アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授の理屈っぽい話。
ここでは、先月16日のムーディーズによる米ソブリン格付の引き下げにまつわる話題を紹介する。
(米)債務の急増の一部は危機(2008年の銀行危機と2020年のコロナ救済)の緊急事態によるものだが、厄介な真実なのは、債務(増大)はこれら危機より長期的に継続しており、今日の債務水準を危機のせいにするのが欺瞞である点だ。
ダモダラン教授は自身のブログで、米財政悪化が一過性の原因によるものでなく趨勢的なものであると指摘している。
教授は今回の格下げの意味を次のように表現している。
「これまで数十年、米国は市場や(格付会社のような)機関から与えられた特別な地位を享受してきた。
それは、経済力とともに(法・制度の)制度的安定に基づき築かれてきたものだ。
ムーディーズによる格下げは、そうした日々が終焉を迎え、米国が世界各国と同様に財政・金融政策での規律の欠如についてより大きな責任を問われることになる兆候であるように思える。」
つまり、米国は特別な国から普通の国に転落を始めたということだろう。
ダモダラン教授は「米国例外主義」が「終焉を迎えつつある」とし、そのプロセスが「長期では米国と世界の両方にとって健全だが、短期では痛みをともなう」と予想している。
(次ページ: 米ソブリン格下げが価値評価に及ぼす影響)