CNBCの国際チャンネルの視聴者とは誰だろう。
ビジネス・パーソンも見るかもしれないが、CNBCのターゲットから考えれば、やはり金融・投資の関係者だろう。
その視聴者が「日本の輸出は円安の恩恵を受けていない」というメッセージをどう受け取るだろう。
6月まで続いた今回の円安局面では、多くの外国人が日本株を買った。
日本株の名目株価は大きく上昇したが、円安を考えれば、価値の上昇は(外国株と比べ)さほど目覚ましくはなかった。
しかし、外国人の日本株買いの多くは為替ヘッジ付きだったから、円安になってもそれによるマイナスも被らなかった。
つまり、この円安局面、外国人は日本株の名目株価の上昇からフルに恩恵を受けたのだ。
先月の初めの円高で状況は急転する。
円高になれば為替ヘッジが恩恵を奪う役に転じてしまうことはすでに述べたとおりだ。
日本株の下げが特に大きかった一因はここにあるのだろう。
8月の日本株急落でヒヤリとした外国人は「日本の輸出は円安の恩恵を受けていない」というメッセージをどう受け取るだろう。
すでにこのメッセージがだいぶ前から聞かれていたとは言え、円安->日本株高、円安->貿易収支改善といった条件反射への疑念が幾分強まるかもしれない。
悲しいことに、こうした連想の変化は、円安時の日本株需要に重しとなるだけでなく、長期的な円相場への見方を弱気にしてしまう。
これまでは、循環的に円安になっても、循環的にも趨勢的にも貿易黒字で跳ね返すだろうと思っていたものが、趨勢的に円安かもしれないとの印象を与えてしまう。
仮にそうした連想の変化が起これば、今度は日本人の方でも従前の連想を強める人が増えるかもしれない。
長い目で見て日本株に重しがあり、円も弱含みなら、海外資産で運用すべきと考えるのは当然のことだ。
日本が中国のような政治体制にでもならない限り、国民の外貨・海外資産での運用を妨げることはないだろう。
逆に言えば、筆者は将来の一時期、そういう状況が起こりうると考えている。
それは、異次元緩和が進行中の頃から予想されていたことでもある。
日本株も米国株も、短期的にはまだまだ上昇する可能性が十分にあると思う。
しかし、そうしたマーケット・タイミングの話とは別に、時々は長期・超長期がどうなるのかも思いを巡らせておくべきだろう。