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【短信】雇用が弱くても大丈夫:ジェレミー・シーゲル

ジェレミー・シーゲル教授が先週発表の弱い雇用統計についてコメントし、下方修正を加味しても米国株市場には上昇余地があると話している。


労働統計局に問題がなかったとは言わない。
どうやって改善すべきかと言えば、調査票の回答を義務化し、提出期限を定めるべきだ。

シーゲル教授がCNBCで、米雇用統計の調査プロセスについて苦言を呈した。

労働統計局が1日に発表した7月雇用統計は、予想を大きく下回る結果だった。
さらに市場が驚いたのは、前2か月についても大きく下方修正されたこと。
これにより、米労働市場に対する人々の理解は大きく変化した。
労働市場は相当に悪化しているのかもしれない、と。

この結果を受け、トランプ大統領は早々と労働統計局長を解任した。
政治的意図により発表内容を操作しているとの決めつけからだ。
大統領の主張は、足下の結果が政権・共和党を悪く見せるために悪い結果に操作されているというものであり、実際には米経済は堅調というものだった。

今回の下方修正の原因については、回答の遅れや公立学校での就業者数悪化などが指摘されている。
一般企業からの回答の遅れはともかく、公立学校での悪化などは政権による公務員の大量解雇が関係しているとの指摘もある。

シーゲル教授は、統計が政治的意図で操作されているとの見方は誤りとした上で、それでも労働統計局の責任は重いと話す。
極めて重要な統計であり、金融政策や市場を誤った行動に走らせかねないからだ。
FRBは利下げに慎重な理由の1つに強い労働市場を挙げてきた。
シーゲル教授は、それでもFRBは早期に利下げを再開すべきと主張してきた。

問題は、労働市場が以前思っていたほどには良くなかったとして、それが今後の投資見通しにどう影響を及ぼすかだ。
《永遠のブル》は「強気トレンドがまだ続いている」と話す。
従前から心配してきた関税について落としどころが見え、かつ報復関税がほとんど起こらなかったことに安心しているようだ。

「問題は、AIを用いて十分に生産性を上昇させられるかだ。
市場が言っているのは、できる、ということ。
関税による損失を埋めるのに十分な弛みが企業にあるということ。
年末に向けてまだ上昇する可能性がある。」

AIが企業の生産性上昇に寄与し関税のマイナスを埋める、というのがシーゲル教授の従前からのシナリオ。
株式市場やサプライサイダーには心地よく響くかもしれないが、生身の人間には優しいシナリオとは言い難い。
消費が大きなウェイトを占める米経済で、この強気はいつまで続くだろうか。


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