佐々木融氏:欧州投資家は円高シナリオを探る

JP Morganの佐々木融氏が、111円程度までの円高を予想した。
興味深いのは、欧州投資家の間に円高シナリオを抱く人が多いという話だ。


今後1―2カ月で111円程度まで上昇すると当社は引き続き予想している。

佐々木氏がReutersへの寄稿で、従前の円高予想を据え置き、3つ理由を挙げている:

  • 新年度に入って対外証券投資が再開
  • 米長期金利上昇で日米金利差とドル円の相関が戻ってきた
  • 米長期金利上昇が期待インフレ上昇ではなく実質金利上昇で進んだ

日米貿易摩擦が為替を巻き込んで高まらない限りにおいて、円安ドル高予想は至極自然なものだ。
問題は、貿易の不均衡という中長期的テーマに対して、何かアクションが起こるのかどうかだ。
その点について、佐々木氏は日本でも米国でもなく、欧州の投資家の声を紹介してくれている。

「日本関連の材料が何らかの市場の動きにつながるのではないかとの思いからか、特に次の点を尋ねられることが多かった。
『円が歴史的に安い水準にある中、日銀の金融政策、政治リスク、貿易摩擦といった円高方向へのリスクがいつ顕現化して、どのくらい円高になる可能性があるのか』という問いだ。」

欧州投資家の質問の一言一言を丁寧に解釈しておこう。


円が歴史的に安い水準」: グラフを見れば明らかで、日米交渉などで為替がテーマとなれば円高を求められやすい。
日本円の実質実効為替レート
日本円の実質実効為替レート

日銀の金融政策」: 日銀の金融政策に追加緩和の余地は少ない。
したがって、金融政策が理由で円安になる可能性は小さく、円高になる可能性は大きい。

政治リスク」: 安倍政権の終焉・弱体化は日銀のリフレ政策の後ろ盾を失わせる。

貿易摩擦」: プラザ合意を思い出すまでもなく、日米貿易摩擦が再燃し為替が俎上に上がれば、円高を求められることになる。

これだけ材料が揃っているから、欧州投資家は円高シナリオを捨てられない。
対して、円安シナリオを支えるものは何だろう。
それは、米実質金利が予想を上振れることだろう。
しかし、これも一方方向の要因ではない。

実質金利の上昇は経済成長を示唆するから前向きな変化だが、同時に経済成長にともなうインフレを引き起こしがちだ。
これが金融引き締めを促し、最後には景気後退につながってしまう。
その後に起こるのは米利下げであり、日米金利差の縮小である。
仮に2020年不況入り説が当たるなら、それまでたいして時間がないことになる。


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