金融システムレポートの皮肉な黄金律

日銀が公表した「金融システムレポート」4月号を読んでいて意地悪な笑いを禁じ得なかった。
これを書いた人も同じだったのではないか。


金融機関は、先行きのマクロ経済環境の変化も念頭に置いて、リスクに応じた適正な金利設定を行うとともに、引当の適切性を検証するなど信用リスク管理の実効性を向上させていく必要がある。
同時に、金融機関は、顧客企業とのリレーションシップを強化し、企業の生産性向上を積極的に支援していくことが望まれる。

これは「概要」で挙げられた4つのポイントの1つの内容だ。
4つのポイントとは

  • 金融仲介と金融循環
  • 金融システムの安定性
  • 金融機関の信用面のリスクテイクに伴う脆弱性
  • マクロプルーデンスの視点からみた金融機関の課題

最初の3つが現状分析であり、最後の1つが課題である。
この課題の内容が上記引用部であり、とても時宜を得た的確な指摘だと思う。
日銀は市中銀行にこうした課題への対応を求めているのである。

ではなぜ意地悪な笑いを禁じ得なかったのか。
この文章があまりにも普遍の真理だったからだ。
この文章の4か所を変えてみよう。
変更点を赤、注釈を青で記してある。


中央銀行は、先行きのマクロ経済環境の変化も念頭に置いて、リスクに応じた適正な金利設定を行うとともに、引当の適切性を検証するなど金利変動リスク管理の実効性を向上させていく必要がある。
同時に、中央銀行は、顧客企業(=市中銀行)とのリレーションシップを強化し、企業(=市中銀行)リスク調整後リターン向上を積極的に支援していくことが望まれる。」

このテンプレートはどうやらありとあらゆる課題に適用可能であるようだ。
こうした作文をされる人はさぞかし心苦しいのだろう。
日銀のスタッフは総じて誠実で自ら客観視のできる人たちばかりだ。
彼らが市中銀行に注文をつけるとき、彼らはそれがそのまま自分たちに帰ってくる話であることに気づいていよう。

日銀は量的緩和の深化を進めたことで、金融システムのリスクの多くを一手に引き受ける意思決定をした。
日本に再び金融危機が起こるなら、その時の震源地の1つが日銀になる可能性は高い。
他人の心配をしている場合かとの思いがよぎる。

さらに、誰がプレートを潜り込ませたのか。
適度のガス抜きをすればここまでエネルギーが蓄積することもなかったろうに。
市中銀行からすれば、加害者が被害者に対し被害を受けないよう努力しろと命令しているように聞こえるのではないか。


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