門間一夫氏:インフレ偏重はどこかおかしい

白川前日銀総裁の時代に金融政策担当理事を務めた門間一夫氏が、日銀の物価目標の柔軟化を求めている。
白川時代に日銀が何を考えていたのかがうかがわれ興味深い。

「正常時の金利水準に大きく影響する長期平均的なインフレ率は、ゼロ%ではなくて2%ぐらいのプラスが良いとする考え方で、グローバルスタンダードとなっている。」


門間氏が週刊エコノミストで、2%物価目標の意義を認めている。
金融政策にはゼロ金利制約がある。
仮にインフレ率が0%だと、政策金利を0%にまで下げても実質金利は0%までしか下がらない。
潜在成長率が0%そこそこの日本にとっては、金融緩和の効果がほとんどないことになる。
仮にインフレ率が2%だと、政策金利を0%まで下げれば、実質金利は-2%まで下がる。
ここに金融緩和の余地が生まれる。

門間氏は2%物価目標前の日銀を回顧している。
デフレが問題とされ始めた1998年から15年ほど、インフレ率は平均でほぼゼロ%だった。

「こういう現実がある以上、日本で企業や家計が『物価が安定している』と感じるインフレ率は、諸外国の場合より低いのではないか、したがって2%のインフレ目標は日本には高すぎるのではないか、と日銀は考えてきた。
しかし、こうした日銀の考え方は世間に受け入れられなかった。」

別に世間が受け入れなかったわけではあるまい。
前政権のレベルがあまりに低かったために政権交代が避けられず、新政権が新しものに飛びついただけだろう。
しかし、とにかく前政権と比べれば日本の経済は改善した。
循環的な改善もあろうが、政策が将来の成長を先食いした面、改善のカタルシスとなった面もあるのだろう。
しかし、とにかく経済は改善した。


門間氏は「異次元緩和の5年ではっきりわかったことが二つある」という。

  • 日本の物価は上昇しにくい
  • 2%インフレが実現しなくても不都合はない

極端な金融政策に副作用があるのは黒田総裁も認めている。
ならば、なぜいつまでも2%物価目標に固執しなければならないのか。

「例えば、インフレ率だけでなく需給ギャップにも十分高いウェートを置いて政策判断を行う、という考え方には理論的、国際的にも正当性がある。」

今の日銀は2%物価目標を至上命題のように謳いながら、その未達をさておいて、経済の改善を日銀の手柄にしようという話し方が見受けられる。
これはアンバランスだ。
経済の改善を手柄とするなら、それを重要な目標と位置付けるべきであり、それには物価目標を相対化すべきだろう。

おそらく家計も企業も物価上昇自体を求めているわけではない。
家計はもちろん、企業もコストが上昇しないなら物価上昇を必須とは考えないだろう。
その上で、物価上昇と経済改善のどちらが大切なのか?と問えば、答は自明だ。
しょせん、2%インフレが望ましいなどという話、中央銀行の側の都合でしかないのだ。


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