加藤出氏:日銀が続ける2つの従属

東短リサーチの加藤出氏が、日銀の2つの従属について論じている。
施行20年を迎えた新日銀法は、中核的な精神がほとんど失われていると言う。

「旧日銀法は、日米開戦直後の1942年に制定された。
その主目的は、戦時下で急拡大する財政赤字を日銀にファイナンスさせることにあった。」


加藤氏は週刊ダイヤモンドへの寄稿で、日銀の歴史を解説している。
戦後にはとても似つかわしくない主目的を有する旧法は1997年の改正まで続いた。
そして、新日銀法が1998年に施行されてから今年で20年になる。
新法では中央銀行に独立性を与えることに主眼が置かれた。
では、具体的には何からの独立であったろう。
加藤氏は2点の従属からの脱出を指摘している。

  • 財政: 赤字国債増発の受け皿として日銀が利用されることを防ぐ。
    景気刺激のための金融政策をとらせたがる政治から独立させる。
  • 為替: プラザ合意後進んだ円高への対処として金融緩和が実施され、これがバブルを招いたとの反省から、為替介入は財務省の役割とされた。

この2つが新法の目玉だとすれば、法の精神はすっかり失われてしまったことになる。
今や日本だけでなく世界各国が金融政策を為替誘導に用いるようになった。
為替介入と言えば国際社会におけるルール違反になりうるが、金融政策と言えば国内施策だからOKという不思議な国際社会になった。
これではトランプ大統領の「安全保障のための関税」を嗤えない話ではないか。

さて、ではそもそもの財政従属については戦時中より改善されたのだろうか。

「日銀が保有する長短国債の名目GDP比は、終戦前の44年時点で13%だったが、現在は80%だ。」


高橋是清が日銀に国債を引き受けさせた時、その国債の大半は追って市中で消化された。
つまり、当時の日銀の立ち位置は、一時的に保有するだけのアンダーライターのようなものだったのだ。
しかし、今では日銀はがっつり国債を抱え込んでいる。
並べられた数字13:80は恐怖を感じさせるものだ。
加藤氏は日経電子版でこう紹介している。

「東京小売価格指数の上昇率は44年に前年比で12%、45年(敗戦の年)には45%に達した。
ただし、これは物価統制による公定価格を集計した統計である。
・・・、45年末の消費財の価格は公定価格の約37倍に達していたという。」

本当にリフレなどやって大丈夫かと不安にさせる歴史だ。
日銀が買ってくれるから、政府の財政規律が緩む。
金利はバカらしいほど低位に置かれているから、政府の財務体質改善が進まない。
そして、民間セクターでも同じことが起こっている可能性が高い。
ゾンビ企業・ゾンビ産業・ゾンビ経済の温存だ。

では、日本の財政が健全化に向かうことはあるのか。
日本のおかれた環境は厳しいと言わざるをえない。

「そういったことを多くの人がうすうす感じるようになると、これまでなんとか保たれてきた財政の信認がどこかでプチッと切れる。
ひとたびそれが起きると、中央銀行にはなす術(すべ)がなくなる。」

そもそも、日銀の非伝統的金融政策とは何のために行われたものだったろう。
1990年前後のバブル崩壊後の長期停滞を脱するためだったはずだ。
それと2%の物価上昇とは、いったいどういう関係だったんだっけ?
2%と長期停滞脱出の間のリンクがすでに忘れ去られているのではないか。

「日銀新体制は、遮二無二にインフレ目標を追求するのではなく、将来世代への影響も考えながら、長期的なタイムスパンで政策を運営していくべきである。」


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