ジョセフ・スティグリッツ

 

スティグリッツ:トランプ時代の最大の危険

ジョセフ・スティグリッツ教授は、トランプ政権が世界にもたらす本当のリスクを指摘している。
そのリスクは極めて根源的なところにあるものなのだという。


「トランプが二国間貿易の赤字に集中するのは、率直に言って、愚かだ。」

世界最大・最強の国の国家元首を硬骨漢が一刀両断にしている。
トランプ政権の振りかざす論理の多くがブードゥー経済学によるものは周知のとおりだ。
それが本気ではなく権謀術数によるものとしても、それらは理不尽で迷惑と言わざるをえない。
しかし、そのことを今さら議論する意味はもはや大きくない。

スティグリッツ教授は、ブードゥー経済学だけでなく、トランプ大統領の行動パターンの悪質さに嘆いている。
1つは、大統領が終わった問題に固執する癖だ。

「思い出せば、トランプが国境の壁の話をし出す前にメキシコからの移民の数はすでにゼロ近くまで減っていた。
彼が人民元の為替レートが押し下げられていると批判する前に、中国政府は実際に人民元高を誘導していた。
同じように、すでに鉄鋼価格が、中国の過剰供給力削減努力もあって、底値から130%も上昇した後になって、トランプは鉄鋼関税を導入しようとしている。」

本来ならこうしたおかしな行動はまず身内がストップをかけるべき話だろう。
しかし、不思議なことに、米国の良心的保守であったはずの人たちが口をつぐんでトランプに盲従しているのだ。

「一縷の望みは米裁判所か議会共和党がトランプを抑え込むことだ。
しかし、再び共和党はトランプと連帯し、突如として長年コミットしてきた自由貿易を忘れたかに見える。
数か月前、同党が長年コミットしてきた財政規律を忘れた時と同じだ。」


今やストップをかけられるのは司法だけになったが、司法もさまざまな圧力をかけられ苦しい状況に追い込まれてしまった。
共和党は大統領を利用できるだけ利用しようという腹なのだろう。
中間選挙も待っている。
しかし、だからといって大統領府の暴走を許せば、自国・国際社会に実害が及びかねない。
仮に過去の問題を蒸し返すぐらいなら、結局無意味とわかり尻すぼみで終わるだけかもしれない。
だが、大統領がやっているのは、それを超えて国内・国際間の不和を煽ることであり、1つ間違えば大きな実害を及ぼすだろう。

「彼は感情に火をつけ、主要同盟国との関係を危うくしている。
最悪なのは、彼の行動が純粋に政治的動機によるものである点だ。
彼は、選挙民の目に強く対決を辞さないと映ることを望んでいるようだ。」

自分のポーズのために同盟国の多くまで巻き込むのがこの大統領のやり口だ。
こうした実害が、大統領最大の弊害を生み出すとスティグリッツ教授は指摘している。

今後数年、私たちは根本的に異なる経済システム・歴史・文化・社会的嗜好を持つ国家間で、どうやって『公正な』世界の貿易体制を生み出すかを考えないといけない。
トランプ時代の危険とは、世界が米大統領のツイッターに注目し次々と崖から突き落とされないようしている中で、そうした実際の難しい課題への取り組みがなされないことだ。

スティグリッツ教授は、新興国の成長とともに世界のバランスが変化したことを認識している。
変化の結果、西側先進国を中心に作られた国際ルールがうまく機能しえなくなっていることも認識している。
それぞれが自国の利益を優先するのではなく、旧来の先進国にとっても、成長した新興国にとっても、途上国にとっても「公正な」新たな秩序が必要だと考えているのである。


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