【短信】クルーグマン:忘れてはいけない3つのルール

ポール・クルーグマン教授が「忘れてはいけない3つのルール」をツイートしている。
ツイートした本人は意図していないだろうが、日本人にはなんとも皮肉な内容になっている。


クルーグマン教授は23日こうツイートしている。

忘れてはいけない3つのルール:

  1. 株式市場は経済ではない
  2. 株式市場は経済ではない
  3. 株式市場は経済ではない

それでも、投資家は貿易戦争の見通しに喜んでいないようだ。

言うまでもなく、トランプ大統領へのあてつけである。
当選後上昇した株式市場を指して、自身の政策の正当性の証として手柄を誇った大統領に同じ言語を用いて反撃したものだ。
当選後や就任まもなくの株価に大統領が何の影響も与えなかったとは言えまい。
何かしら経済や市場の気分に働きかける、いわばカタリストとしての効果はあったかもしれない。
しかし、それと政策の正当性とは別物だ。
むしろ、政策効果としては前政権の政策が効いている面も大きい。
そうした当たり前のことをクルーグマン教授は3か条のルールとして提示したのだ。

日本人にとっては既視感の強い出来事だ。
安倍首相は、前政権の終焉が決定的になったと同時に始まった株高を指して「勝負あったと思っている」と選挙の勝利と政策の正当性をアピールした。
勝ちは最初から決まっていたのだら、やめておけばいいのに。
株価が踊り場に達し一方通行でなくなると、こうした発言はすっかり聞かれなくなった。
株安で責任をとれば、それはそれで潔いと思えただろうに。

何とも皮肉なのは、この3か条を突き付けたのがクルーグマン教授であるところだ。
言うまでもなく、アベノミクスで最も結果を出したとされる金融政策の提唱者だ。
教授はこの3か条を2012年に(敵ではなく)まず味方から突きつけるべきであった。


その通り、投資家は保護主義のゆくえに悲しんでいる。
しかし、当事者の顔を見てみるとよい。
喧嘩をしかけた米国、その原因を作った中国。
では、なんで日本がまだ当事者なのか。
たいして鉄鋼・アルミを売っているわけでもない同盟国なのに。

トランプ大統領の言うことのほとんどは耳を貸すに値しないが、今回の関税に関して唯一耳を貸すべき言葉があった。

「これについてはさまざまな見方があろうが、どのような見方をしても、これは世界の歴史における最大の赤字であり、制御不能だ。」

何とかして問題の解決を図らなければいけないとの率直な意見表明である。
もちろん(近視眼的な)中間選挙や国内産業保護などという狙いが大きいのだろう。
しかし、では、トランプ大統領がこれらを諦めれば、貿易赤字を放置していいということになるのだろうか。

ケインズのバンコール構想の背景には、貿易の不均衡が黒字国と赤字国の双方に原因があり、双方が是正するよう努めるべきとの考えが流れていた。
米貿易赤字の責任が米国にあることは間違いないが、黒字国・債権国に責任がないと言ってよいのか。
それで問題が解決するのか。

経常黒字国が経常赤字の責任を経常赤字国のみに負わせる限り、こうした話は思い出したように何度も起こる。
そして、そのサイド・ストーリーが米金融市場のバブルだ。
経常黒字国から流入するマネーが米経済を狂わせる。
バブルが弾け、対米債権国が深手を負うことで歪みの一部を解消する。

日本は今のところもっぱら米国や中国を批判するばかりだ。
それなら日本はどうしていまだ当事者なのだろう。
その意味を理解しないところに、黒字国が加害者になりかねない危うさがある。
その経常黒字が(金融政策の名を借りた)為替政策で助長されているならなおさらのことだ。


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