ラグラム・ラジャン:魔法の瞬間の到来

元インド中央銀行総裁 ラグラム・ラジャン教授が、各国の金融政策とその断層について語っている。
新興国のおかれた状況を代弁するほか、金融政策のもたらす「魔法の瞬間」について語っている。


私たちは今、各国がさまざまな非伝統的政策をとる環境にいる。
これらがどういう効果を持つか、他国にどう影響かするか不確実性を生んでいる。

ラジャン教授がBloombergで金融政策を始めとする各国政策のダイバージェンスに潜む危うさを指摘している。
こうしたダイバージェンスはさまざまなスピルオーバー効果を及ぼすという。
その一つがリーマン危機後に進んだ市場間の資本移動だ。
緩和的な市場では中央銀行をはじめ経済のバランスシートが拡大し、そこから相対的に引き締まった市場に資金が移動する。

「膨大な資本が流入したが、それは持続するものではなく、いつか流出する。
だから、流入した時には流出する時の準備をしておかなければいけない。」

安い資金を使いたがらない新興国

インド中銀総裁を務めたラジャン教授の言葉には重みがある。
1998年アジア通貨危機後のアジア諸国は先進国以上に進化を遂げたのかもしれない。

「新興国の多くが、この資本に頼ることはできないと考えている。
だから、新興国は外貨準備による先進国への低リターンの投資を行わざるをえず、誰も喜べない状態になっている。」

新興国には先進国からキャリー・トレードによる資本が流入している。
しかし、新興国はこの資本がすぐに逃げ出すことも経験済みだ。
だから、経済成長に資するリスクテイクに回らないというのだ。


底辺への競争を生む通貨安誘導

ラジャン教授は、金融政策の名を借りた為替操作についても危機感を示す。

「これら(金融)政策の1つの心配事は、それが行われなかったよりはるかに自国通貨安にするという行いだ。
1つの大きな中央銀行が行えば他の大きな中央銀行が追随し、中央銀行間で政策が伝染してしまう。」

金融政策を用いるか為替介入を用いるかを別として、自国通貨安による外需取り込みとはいわば近隣窮乏化政策だ。
みんなが通貨安政策に走れば、みんなが程度をエスカレートさせざるをえない。
まさに保護貿易と似た話なのに、世界は金融政策を用いた為替操作にはいまだ寛容だ。

「結果、バランスシートは拡大し、経済成長の効果は得られない。」

通貨安競争でレバレッジもエスカレート

多くの国が通貨安競争をエスカレートさせ、一部無駄にバランスシートを拡大させた。
これがリスクを増やしたが、効果は芳しくない。
ラジャン教授は、非伝統金融政策は金融危機の危機対応としては機能したが、その後の経済成長を促進したとは言いがたいと語っている。

「長い金融緩和にいい効果は少なく、悪い効果さえあった可能性がある。
他の経済にレバレッジをかけてしまった点を心配すべきだ。」

新興国は望まぬレバレッジをかけられてしまった典型例だ。
しかし、これは外国だけにとどまらない。
ラジャン教授は、米国内のレバレッジド・ローン市場でのコベナントの緩みを一例に挙げている。

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