ロバート・シラー:GDP連動債を発行すべき時

ロバート・シラー教授が、先進国によるGDP連動債の発行を提案している。
政府が発行すれば、金融危機における緊縮財政を回避できるのだという。


この新たな債権商品はそのとてつもない(潜在的市場)規模によって極めて有望だ。
初めは少額の発行から始まるだろうが、当初から極めて重要と認識されるはずだ。
世界のGDPの総額は世界の株式市場の時価総額よりはるかに大きい。

シラー教授がProject Syndicateで提唱しているのは、変動金利債でも物価連動債でもなくGDP連動債である。
四半世紀にわたり構想を温めてきた教授が最近、多くの研究者の知見を取りまとめた報告書を米CEPRから公表している。
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永い間GDP連動債が本格化しなかった理由は金融の技術革新が十分でなかったためだという。
また、詰めるべき詳細も多かったとし、ようやく機が熟したという。

GDP連動国債ならば、政府が債券を発行し、自国GDPに連動するクーポンを支払うことになる。
債券と言っているが、アップサイドがあることを考えると株式と似ている。
大きな違いは、GDPが上場企業の利益の総額よりはるかに大きい点だ。
これは金融商品としての将来性にとってプラス要因であろう。

では発行体(政府)にとってはどういう効果を持つのだろう。
シラー教授は説明する。

「GDP連動債発行はいくつかの国にとって『財政スペース』(緊急事態におけるクッション)を生み出す。
現状のように政府の債務返済の金額が固定されていると、問題を抱える国が出てくる。
金融危機ではレバレッジ過多となり、それ以上借金できなくなる。
劇的な対処を採らざるをえなくなり、それが危機からの回復を阻害する。
自ら投資する投資家ではなく納税者が最終的なリスクを負担することになる。」


GDP連動債であれば、経済が大きな打撃を受けている間、政府の返済負担が減る。
その間に政府は過度の緊縮を強いられることなく経済回復を図ればよい。
これは発行体にとって大きなメリットだ。
このメリットを各国が享受しようと動き出したら、確かにこの資産クラスの市場は莫大な規模になるだろう。

一方、投資家にとってはどういう意味があるのか。
投資家は無限のアップサイドのある国債に投資できるのだ。
さらに、各国のGDP連動国債に分散投資することで、対象とする経済のバスケットに近い成長を享受できることになる。

仮に日本政府がGDP連動国債を発行し、日本人が買ったらどうなるのだろう。
景気がいい時、同債券のリターンは上がり、日本の投資家が実入りを増やし、これは総需要を押し上げるかもしれない。
しかし、政府は返済の増分だけ財政支出を絞り、景気に対して中立にするかもしれない。
景気が悪い時、リターンは下がり、日本の投資家の実入りが減り、景気にマイナスに働くかもしれない。
政府は返済が減る分、支出を拡大し、景気を支えようとするだろう。
このしくみ、国内だけでは成立しにくい。
海外投資家があってこそ成り立ちうるしくみのように感じられる。

シラー教授は、今こそまず先進国からGDP連動債発行に踏み出すべきだと説く。
ほとんどの先進国で債務は増え続け、財政の持続性は揺らぎ、財政スペースは枯渇しつつある。
次の景気後退局面でGDP連動債は大きく役立ってくれるだろうと言う。
そして、こうした新商品の導入は需要を考えれば、危機が来る前の平時になされるべきと説明している。


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