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VCが事業モデルと企業統治を悪化させる:アスワス・ダモダラン
2019年9月25日

ニューヨーク大学Aswath Damodaran教授が、米IPOマーケットについて話している。
自社の利益優先のベンチャー・キャピタリストの存在が、新興企業の経営を歪めているという。


真の課題は、ベンチャー・キャピタル(VC)が企業に対し拙い事業モデルと酷い企業統治を拡大するよう促し、それが価格を押し上げていることだ。
ウィワークIPO(の延期騒ぎ)から何もいいことが生まれないとしても、唯一の収穫はおそらくVCが企業に押し付けている事業モデルを見直した点だろう。

「バリュエーション学部長」の異名をとるダモダラン教授がCNBCで、新興企業の経営に対してVCが悪い影響を及ぼしていると指摘した。
上場を急ぐあまり、規模拡大ばかりが望まれる。
金融緩和の弊害もあり、資本市場は実績の利益を重視せず、あてにもならないほど遠くの利益に金を出す。
結果、収益を上げる事業を組み立てるより、売上を上げることの方が優先されてしまう。

ダモダラン教授は、浮かれることなく現実を冷静に見定めるよう説き、いくつか有名な銘柄についてコメントしている。

「ビヨンド・ミートはしばらく市場を独占しており、ビーガンやベジタリアン・フードのブームが来ると思うなら唯一のマクロ・ベットだった。
しかし、その状況は終わりつつある。
インポッシブル・フーズの登場だ。」

ビヨンド・ミートは人口肉の開発・製造企業。
御多分にもれず営業赤字の会社だが、株は人気を集めている。
ダモダラン教授はこの人気の一因を、他に上場している同業がないからと考えている。
仮にインポッシブル・フーズが上場を果たせば、投資家には選択肢が生まれることになる。
問題は、資本市場がこの業種に割り当てるスペースがどれだけかということになる。

「スペースも大きくなっていく。
問題は、すべてのプレーヤーがビッグ・プレーヤーになるのに十分なスペースがあるかだ。
私はないと考えている。」

さらにダモダラン教授は、複数の企業が上場するようになるにつれ、同業間のバリュエーションが収束してくると予想している。
1社だけが他社の3-5倍の価値がつくロジックが見当たらないという。

配車業界について、ダモダラン教授は、ウーバーよりリフトの方がいいと話す。

「ウーバーの野望に引いてしまうためだ。
あまりにも大きな野望を持つと、浪費してしまう。」

ダモダラン教授は、ウーバーの世界戦略が裏目に出ると考えているようだ。
一方で、ウーバー株価はすでに下げており、ありえない水準ではなくなっているとも指摘した。

「ウーバーの現在の株価はひどい水準ではない。
私はIPO時に30ドルと値付けしたが、急速にその水準に調整してきている。」

ダモダラン教授は、NASDAQ上場を予定するフィットネス機器ペロトンについても意見を求められている。
こちらも赤字企業である。

「(ペロトンは)フィットネスの世界を再創造しなければいけない。」

教授は簡単な目の子計算をして、IPO価格がいかに現実離れしたものか示唆している。

VCとは理想を失ったのだろうか。
確かに昔から金の亡者のような人間も多かったが、理想を抱く人もいないわけではない。
しかし、今そういうベンチャー・キャピタリストの噂がほとんど聞かれなくなった。
VCが高値で売り逃げれば、価格調整後そのつけを他の投資家が払うことになる。
それも資本主義なのだろうが、VCは発行体に対して非対称な情報・影響力を持っており、公平とは言えない面もある。
売上拡大を強要し、つけを他の投資家に押し付けるだけのVCならば、その存在は社会悪でしかない。

ダモダラン教授は、新興企業に道を踏み外さないよう警告している。

私は若いスタートアップと話してきているが、規模拡大のプレッシャーはとても大きいという。
その結果、売上という観点からは巨大だが酷い事業モデルの企業が生まれる。
・・・売上高からいくら儲かるかについてもっとリアリズムを持つべきだ。
IPOをする若い企業には、ウィワークのメッセージを理解してほしい。


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