早川英男氏:トランプが異次元緩和を攻撃へ

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日本銀行元理事の早川英男氏が1年以内の長期金利ターゲット引き上げの可能性を指摘した。
今夏にもドル円レートが日米間で政治問題化する可能性があるという。


(トランプ大統領は)いずれ為替について攻撃し始める。

早川氏はBloombergのインタビューで、為替ストラテジストが口を揃えて言及する心配事「為替相場の政治化」を予想した。
本来、自国の輸出産業を有利にするための自国通貨安誘導は国際ルールの違反である。
だから、外国為替市場への介入には大きなハードルがある。
日米の為替介入について言えば、両国合意がないと効果はないとさえ言われる。

そこで、各国は裏道を模索した。
金融緩和による自国通貨安誘導である。
これでも近隣窮乏化政策には変わりないが、政府・中央銀行はあくまで国内の経済政策だと言い張ってきた。
一方で、世間では金融緩和が通貨安誘導であることはもはやタブーでさえない。
最近では中央銀行さえそれを認めるような発信をしている。
(ただし「極端な通貨高の修正」と表現している。)

リーマン危機後は、米国がQEによるドル安の恩恵を受けていた。
日本はその間、歯を食いしばって円高に耐えていた。
米経済が回復すると、今度は日本が異次元緩和による円安の恩恵を受ける番になった。
貸しを返してもらったのだ。
しかし、それも5年となれば、そろそろ角が立つ頃なのかもしれない。


トランプ大統領が就任する直前、榊原英資 元財務官は、トランプ大統領が雇用拡大を狙い輸出増のためにドル安を望むと予想した。
それは、最近の米韓FTAに為替条項が入ったことでも確認できる。
トランプ大統領は日本を鉄鋼・アルミ関税の対象から外していない。
日本にも為替条項を含む要求を突き付けてくる可能性は小さくない。

早川氏はトランプ大統領が「いずれ為替について攻撃し始める」と予想する。
その時、槍玉に上がるのは、財務省の為替介入ではなく日銀の異次元緩和だ。
動機が「政治」であるだけに、時期は「米中間選挙前の夏」となる可能性が高いという。

1年以内に何かあってもおかしくない。

早川氏は年末にもコアコアCPIが1%に達する可能性があるとし、そうなれば日銀が長期金利ターゲット引き上げに動く条件が整うとした。
同氏によれば、1%のコアコアCPIが長期金利ターゲット引き上げの条件というのが市場のコンセンサスになりつつあるという。
それが市場に織り込まれているならば、日銀がその通りに動いて市場が動揺することはないとの解釈だ。

早川氏は、日銀で2年後輩にあたる雨宮正佳副総裁を「よくも悪くもずるい」と評し、長期金利ターゲット引き上げを主導すると予想する。
日銀がこれまで繰り返してきた説明とは異なることをやるだけに「割り切りがないとなかなか乗り切れない」との考えだ。
現実に、2016年9月の「総括的な検証」以降は雨宮副総裁をはじめとする日銀スタッフが政策を主導してきたと解説した。

注目すべきは、1%のコアコアCPIが長期金利ターゲット引き上げの条件というコンセンサスだ。
仮に、これが市場に織り込まれているならば、あるいは、今後織り込まれるなら、黒田総裁がいくら「2%達成まで金融緩和を継続する」と強弁したところでたいした意味がないことになる。
期待頼みの金融政策は、市場のコンセンサスのところまでで効果を頭打ちにしてしまう。


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