ボスティック総裁:限定的な名目の不確実性

アトランタ地区連銀Raphael Bostic総裁による金融緩和の手段についてのブログのパート2。
今回は総裁が抱く金融政策に対する重要な原則が語られている。


「それ(ゼロ金利制約)について何ができるか?との問いは難しい部分だ。
結局これは金融政策の執行の枠組みに対する問いだ。」

パート1ではゼロ金利制約についての問題意識を整理したボスティック総裁だが、パート2では具体的手段について検討している。

米景気はそう長くは持たないだろうとの考えが世間で浸透しつつある。
景気はあと2年持たないかもしれない。
市場はあと1年持たないかもしれない。
FRBのUターンはそう遠い未来の話でもないのかもしれない。

そうした切迫感を感じる人がいれば、次の市場下落・景気後退における金融緩和策を検討しておくべきとの問題意識はもっともな話だ。
仮に不意打ちを食らってしまえば、安易に利下げ・QE4ということになりかねない。
QE4となれば、人々はQEトラップからの脱出が難しいのではないかとの恐怖感を強くするだろう。
米経済が永遠にQEから脱出できないとなれば、投資家の米ドル・米債への見方は大きく舵を切るだろう。

残された金融緩和手段

とは言え、FRBは目下、好景気と財政政策の利を得て果敢に金融政策正常化を試みている。
真逆の方向性の中で、ボスティック総裁は一歩先を見た検討に着手しているのである。
総裁は採りうる手段を列挙している:

  • 長期インフレ目標の引き上げ(前回検討)
  • 現状維持: 2%目標と必要時の非伝統的手段を維持する
  • 名目GDP成長率目標の導入
  • 経済状況に応じた物価目標の柔軟な運用
  • 物価水準目標

マイナス金利が挙がっていないのは興味深いが、それは特に議論されていない。


この5つの選択肢の中からボスティック総裁は物価水準目標を推している。
シカゴのエバンス総裁、サンフランシスコのウィリアムズ総裁、ベン・バーナンキ元FRB議長らも応援団だ。
ボスティック総裁は、物価水準目標を推す理由を説明している。

  • 「2%」より「コミットメント」が重要
    信頼性・コミットメントの効果を発揮するためには、ふらふら目標を変えてはならず、変えるならコンセンサスとよりよい代替案を条件とすべき。
  • 中央銀行の物価安定の責務
    「グリーンスパン議長(当時)は、家計と企業がその財務的未来に影響を及ぼす主要な経済的意思決定においてインフレを無視するようになって初めて物価安定目標が達成されたと言えると示唆した。」
    2%はその定義に適う水準だが、それでも低すぎる。

FRBの物価目標の実際

ボスティック総裁は独特の見方をしている。

「最近まで米国の2%物価目標は2%への上昇パスを中心とする物価水準目標として主に機能していた。」

米PCE物価指数上昇率(季節調整済み)
米PCE物価指数(季節調整済み)

ボスティック総裁は上昇率(微分値)ではなく指数(積分値)のグラフを見せ、いかに物価指数が安定した上昇をしたかをアピールしている。
しかし、上図の上昇率のグラフを見る限り、物価上昇率にはかなりのデコボコがある。
もちろん、上昇率にはベース効果もあるのであまり厳しく見るべきではないかもしれない。
そもそも物価水準目標とは物価の(その時々の上昇率ではなく、望ましい上昇率に応じた)絶対水準を見ようという考えだから、上昇率のデコボコはある程度許容されるべきなのだろう。

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